第122話 勝利後
敵将を討ち取った後、私たちはロルト城まで進軍し、城を占拠した。
敵兵はほぼ出撃していたため、城の中の兵は最低限しかおらず、城主を討ち取ったと言えば、あっさりと降伏して開城した。
ロルト城を落とした理由は、バートン郡の存在があるからだ。
援軍に来た兵は五千はいたが、全部を討ち取れたわけではないし、バートン郡にはまだ、残りの兵もいるため攻めてくる可能性もある。
当初は進軍を止めるだけでいいと言われてはいたが、バートン郡があるとなると、ロルト城を抑えるのは必須であるだろう。
ロルト城では、祝勝会が行われていた。
こちらの被害は最終的にそれほど多くなかっただけに、大勝利と言えるだろう。
敵将を討ち取ったリーツは、元々マルカ人という事で、多少軽んじて見られていたが、今回の件で軽んじるのは間違いであると知らしめたため、人気が上昇していた。
反面差別意識が消えない者は、リーツがチヤホヤされ始めたことが気に入らないようである。
そういう者たちに、リーツを傷つけさせないようにしないといけないが……まあ、リーツは強いから大丈夫か。
「アルス、ちょっといい?」
私が隅の方で祝勝会の様子を見ていると、ロセルが話しかけてきた。
彼は祝勝会など、騒がしいことには積極的には参加しないタイプだ。
酒の飲めない年齢だからという理由もある。
この世界でも、子供は酒を飲んではならない、と思われているからな。
「なんだ?」
「勝ってみんな浮かれちゃってるけど、援軍を阻止して、この城を占拠したことは、決して勝利であるとは言えない。やっぱり本隊がスターツ城を落とさないとね」
「それはそうだな。援軍を行かせなかったら、大丈夫なんじゃないか?」
「楽観的すぎだよ~。とにかく今すぐ戦況を調べさせて、それに応じて援軍を出すべきだね。まあ、楽勝ムードなら、引き続きバートン郡に睨みを利かせ続けるのがいいと思うけど」
「確かに気を緩め過ぎたらいかんな。スターツ城を落とせたのなら、クラン様からの使者が伝えてくるはずだろうが、そのような報告は一切受けていないようだし。少なくとも現時点では勝敗は決していない可能性が高い」
スターツ城は難攻不落の城と呼ばれているらしく、平地の多いミーシアンにしては珍しい山城のようだ。
攻めあぐねていたとしてもおかしくはない。
俺はファムを呼んで、スターツ城での戦の様子を調べてくるよう頼んだ。
「また情報収集か。そんなの斥候にやらせりゃあいいだろう」
「お前らが一番早くて正確なんだ」
シャドーは工作だけでなく、情報収集も正確でかつスピーディーに届けてくれる。シャドーの実力からすると、もうちょっと高度な任務を任せてもいいかもしれないが、まずは情報が必要だし任せた方がいいだろう。
「まあ、別にいいが。金は貰うぞ」
「分かってる」
ファムは、少し文句を言ったが、依頼を受けた。
翌日、軍議が開催され、私はシャドーにスターツ城の情報を集めてくるよう依頼を出したと伝えた。
しばらくはその結果を待ちながら、バートン郡の動きを警戒するという方針を取ることになる。
そして、数日後、シャドーからの報告が来た。
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