第120話 戦闘

 アルスの命令を受け、リーツは敵将ダンのいる場所へ、馬を走らせた。


 その手にはハルバードが握られている。


 リーツは剣、弓だけでなく、長柄武器を使った馬上戦も得意としている。

 特にハルバードは得意な武器の一つだった。


 馬を器用に操り、リーツはダンの下へと向かう。


 ダンは前線で積極的に戦っており、大きなハルバードを振り回して、兵士たちを次々に切り伏せていた。


「オラオラ! 雑魚はどきやがれ!! 用があるのは大将の首だけだぁ!」

「ひぃい!」


 前線にいたのは、訓練を積んだ勇敢な兵士たちだけであるが、ダンの気迫に押されて怯えてしまっている。


 リーツは、ダンの前に立ちふさがり、ハルバードを受け止める。


 一太刀交えただけで、ダンのパワーが並外れていることを知った。


 逆にダンも、リーツの実力を即座に見抜いた。


 リーツは、しなやかな体をしているが、その体にはかなりの筋力を秘めている。


 決してダンとも力負けすることはない。


「ほう、マルカ人にも強者がいたとは初めて知ったな」


 リーツの姿を見て、ダンは意外そうな表情を浮かべる。


「マルカ人が俺たちミーシアン人の戦場に何のようだ?」

「無駄話をするつもりはない。あなたの首をアルス様に捧げる」


 リーツは鋭い目つきで、ハルバードを構えた。


「お前を仕えさせた変わった領主がいるようだな。まあ、強ければマルカ人だろうが、ゴリラだろうが家臣にする価値はある」


 ダンもそれに合わせて、ハルバードを構える。


「貴様を殺す男の名を教えておこう。ダン・アレーストだ」

「……リーツ・ミューセスだ」


 名乗り終えたら、二人は馬を走らせ、斬り合いを始めた。


 達人級の腕前を持つ二人の馬上戦闘は圧巻だった。


 本来は安定感に欠け、武器を操りにくくなる馬上にも拘わらず、自由自在にハルバードを操る。


 一心同体になっているとしか思えないほど、馬を効果的なタイミングで下がらせたり、横に飛ばせたりして、攻撃を回避したり、敵の死角に入り斬撃を入れようとする。


 傍から見たら、ほぼ互角の戦いをしている二人であるが、焦りの表情を浮かべていたのはダンだった。


(っち、この野郎……見た目に反して力が強い……さらにハルバードを振る速度、攻撃のフェイント技術……間違いなく只者ではない……)


 現状、防戦一方になっており、攻撃の手段がなかった。


「はぁあああ!!」


 ダン以外の敵の騎兵が突撃してくる。


 攻撃を難なくかわして、胴体をハルバードで一刀両断した。


 ほかの兵に気を取られたことで、隙が出来た。

 ダンは正々堂々という気持ちなど持ち合わせておらず、殺せそうなら殺す男である。

 その隙を見逃すはずもない。リーツの首を狙い、ダンはハルバードを振るった。


 当然リーツも、隙を作ったらやられるという事は、豊富な戦闘経験から理解していた。


 すぐにダンの攻撃を察知して、受け止められない位置に来ているので、体を逸らせてハルバードを回避。回避と同時に、左手でナイフを瞬時に取り出して、小手で守り切れていない場所を斬りつけた。

 ダンがハルバードを振るう速度を利用して、待ち構えるように斬りつけた。


「ぐっ!!」


 ダンの右腕から血が飛び出る。


 リーツは、手ごたえから深い怪我を負わせたという確信があった。


 今、自分のハルバードを受け止めることは出来まい。


 思い切りハルバードを振りかぶって、ダンに斬りかかった。


 受け止めるが案の定、腕に力が入らず握れていなかったため、ハルバードを落としてしまう。


 間髪入れずにリーツは、ダンの首をハルバードで斬りつけた。


 ダンの首が、血をまき散らしながら空中に舞い上がる。


 リーツはその首をキャッチ。


 そして、首を掲げて、


「ダン・アレーストを討ち取った!!」


 そう大声で叫んだ。




※【あとがき】


重大なお知らせを近況ノートに書きましたので、ぜひご覧になってください。

↓近況ノートへのURLです。

https://kakuyomu.jp/users/abcddi23/news/1177354054898458927

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