第119話 奇襲成功
「何!?」「伏兵だぁ!!」
ベストなタイミングで、メイトロー傭兵団は奇襲を仕掛けた。
敵は両側面から魔法兵と弓兵の攻撃を受けることになる。
魔法騎兵での防御も、呪文を唱える必要があるため、奇襲には滅法弱い。
弓もメイトロー傭兵団は、名手が多いようで正確無比の射撃が来る。
完全な対応は不可能で、大勢の騎兵が短時間で討ち取られる。
「大将!! 後ろからも兵がぁ!」
「何だとぉ!」
完全に包囲されていることに、今ここで敵が気づいたようだ。
先ほどまで勝利を確信していた余裕の表情が、打って変わって焦りに変わる。
しかし、その表情もすぐに変わり、落ち着いた表情になった。
「俺たちは罠に嵌められ包囲された! だが、まだ活路はある!」
敵将ダンが声を上げて叫ぶ。
「正面にいる雑魚どもを蹴散らして、敵の大将を仕留めれば俺たちの勝ちだ! 野郎ども覚悟を決めろ!!」
ダンはそう叫んで馬を走らせ、こちらに突撃してきた。
大将が突撃したのに兵士たちも見ているわけにはいかないので、同じくこちらに騎兵たちが突入してくる。
「窮地になって逆に選択肢を狭めたか。覚悟を決めたやつの顔をしている」
「油断は禁物……ですね」
ミレーユとリーツがそう言った。
二人の分析は正しく、どうも背水の陣みたいな効果を発揮して、敵兵が死に物狂いで前進し、ルメイルの首を狙いに来た。
側面からの奇襲でも、統率が完全に乱れず、士気も保ったままとは相当訓練されている軍隊のようだ。
一度の奇襲で伏兵がいることも、敵には分かっているので魔法攻撃も防御魔法で防がれ始める。
敵は一兵一兵が強力で、我が軍の兵士たちは押され始める。
特に敵の大将ダンの活躍はすさまじく、巨大なハルバードを一振りすれば、数人の兵を再起不能にしていっている。
ダンのその活躍を見ていたリーツが、
「倒してきます」
そう言って馬を走らせようとする。
確かにダンの働きはすさまじく、倒したら敵の統率は流石に取れなくなり、士気もがた落ちするだろう。
しかし、あんな強い奴と戦わせて、リーツが死ぬのはまずい。止めなくては。
「待て」
「しかし……」
「行かせてやりな」
ミレーユが横から口をはさんだ。
「今、奴の活躍を止めなければ、どうなるか分からないよ。ああいう奴は、罠にかけてもそれを力づくで突破する時があるからね。アタシは所詮女だし、ああいうのには勝てる気はしない。やれるとしたらリーツくらいだね」
「だがな……」
「家臣の力を信じてやれないのは、いい主とは言えないよ」
ミレーユのその言葉が、少し心に響いた。
安全な采配をすることが家臣のためになるわけではない。
リーツも勝てないと思って言っているわけではないだろう。
「……あいつに勝てるか、リーツ」
「勝てます」
リーツは即答した。
ダンの強さは目の当たりにしただろうに、それでもリーツに怯えなどは一切感じられない。
自分が必ず勝つ、確かな自信を感じるような目をしている。
「分かった。あいつの首を取ってこい」
「かしこまりました」
リーツは馬を走らせて、ダンのいる前線へと向かって行った。
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