第114話 援軍
ロルト城へ進軍中。
「坊や、シャドーからの報告が来たよ」
ミレーユがそう言ってきた。
特定の触媒機に音を送る、トランスミットの魔法でシャドーからの報告を受けることにしていた。トランスミットには距離制限があるが、シャドーはメンバーが何人かいるため、何回か中継して報告すれば、かなりの速さで情報をこちらに届けることが出来るようになっていた。
報告の内容は三十分前にロルト城の兵が出陣したというものだ。兵数は想定通り五千である。
トランスミットは、単純な音しか届けることは出来ないが、慣れた者たちなら会話をすることが可能だった。
ミレーユはトランスミットを非常に使い慣れているので、受信する役を任せていた。
報告内容をルメイルに伝える。
「予想通りであるな」
「はい」
「敵が出陣したのなら、この街道に布陣をするべきだね」
とミレーユがそう意見を言った。
「理由は?」
「敵の騎馬隊が援軍に駆けつけるためには、このプラン街道を通らないと時間がかかりすぎるから、ここを通ってくるのはほぼ間違いない。仮に別の場所を通るのなら、機動力が奪われた騎馬隊を一網打尽にすればいいだけの話だしね」
もっともな意見だった。
今回は、敵の援軍を食い止めるのが役目の一つでもあるし、街道に布陣するのはその目的から考えても理にかなっている。
それから布陣する場所を決める。
敵の騎馬隊は一日でこの辺りまで来るだろうから、近くから選んだ。
最適な場所ではなかったが、早く布陣をして場所を整える事が大事である。
防護柵を急いで前方に設置して、敵の騎馬突撃に備える。
元々木材は用意して運んでいたので、早く設置することが出来た。
後は敵が来るのを待つだけである。
今回は倍の兵がいるとはいえ、敵は強いという話だ。
騎馬の突撃で、兵たちの統率が大きく乱され、やられるという事になりかねない。
下手したら死んでしまうので、気を引き締めて戦に臨まなくてはいけない。
敵の襲来を待っていると、ミレーユの触媒機に再び報告が届いた。
敵軍がすぐ近くまで来たのだろうか?
その予想は見事に外れた。
「……へぇそれは面白いことになったね」
報告を受けたミレーユがにやりと笑う。
トランスミットでの会話は私は分からないので、
「何という報告が来たんだ?」
と尋ねた。
ミレーユが面白いことといったので、若干不安である。
普通とは感覚が違うからな、この女は。
「敵軍はこちらにそのまま来ると予想していたら、予想外のルートを行ったらしい。気になって付いて行くと、ダンドル平原という場所に到着した。そのダンドル平原には別の軍がいて、そいつらと合流してこちらに向かってきているようだ」
「……何?」
「ま、要は援軍があったらしいな」
「援軍だと? どこから?」
「旗の模様を見た限りでは、バートン郡の郡長、セルドーラ家の物らしい」
バートン郡はベルツドの北東方面にある郡だ。
ロルト城に援軍を出せる位置には確かにあったはず。
だが話によると、このバートン郡はクランに付くかバサマークに付くかでもめており、現時点では中立的な立ち位置になっていたはずだ。
なのでしばらくは放っておいてもいいという結論に達していたはずだが……
「援軍はどのくらい来たのだ」
あくまでバートン郡にいるバサマーク派の貴族が、私的に援軍を出しただけかもしれない。それなら数百、多くて千人くらいの援軍になるだろうから、それほど問題視するほどの数ではない。
「五千は最低でもいたようだ」
「……なんと」
どうやら短期間で、バサマークに付くべきだと郡内が纏まったらしい。
予想外の出来事である。
これでプラス五千で、数の上では互角になってしまった。
私はルメイルに援軍を報告する。
ルメイルはかなり驚き、緊急で軍議を開催することになった。
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