第111話 同時攻略

 翌日、軍議が開催された。


 最近はミーシアンも冬になり、肌寒くなっていた。

 今年はどちらかというと暖冬であるようだが、六月下旬に差し掛かると雪が降る可能性もある。そうなると行軍は非常にしにくくなるので、攻略を急ぎたいところだ。


「さて、スターツ城攻略の軍議を開始する」


 バルドセン砦を攻略し、次はスターツ城の攻略へと移る。


 スターツ城はベルツド城への道に繋がる街道を守る城である。

 ここを落とさなければ、大規模な軍勢をベルツドへ通すことは難しい。

 平地に築かれている城であるが、防壁が非常に高い上に、防壁自体が魔法が効きにくい素材で作られており、さらに防御魔法の準備も万全。非常に強固な城である。落とすのは苦戦は必至であるが、今の戦力差ならばそれでも落とせる可能性は低くない。


 リューパからスターツ城を守る将の話などを聞いた。

 裏切りの可能性は非常に低いようなので、力攻めか包囲で落とさないといけない。


「バルドセン砦から直接スターツ城を侵攻することは出来るだろうが、それには問題がある。ここだ」


 クランは目の前に敷かれているベルツドの地図を指さす。


 指さす先には、ロルト城と呼ばれるスターツ城の北西にある城があった。


「この城を無視してスターツ城を攻略しに行った場合、背後を突かれる可能性がある。今回はスターツ城を落とされるわけにはいかないだろうから、ベルツドからも援軍が来るだろうから、挟み撃ちになってしまう。それはまずいからここを落とす必要がある」


 クランがそう説明をした。

 確かにちょうど無視しにくい位置にロルト城はある。

 スターツ城の重要性を考えて、援軍に行ける位置にこの城を配置したのだろう。


「ただしロルト城だけを落としに行っても、当然その時はスターツ城とベルツドの軍勢が援軍に来て、挟み撃ちにされる。そこでここは兵を二手にわけて、スターツ城とロルト城を同時に攻略するのがいいと私は思うのだが、皆はどう思う?」


 クランの意見に異論は上がらなかった。

 ここまで数で優っている場合は兵を分けるデメリットも非常に少なくなるし、良い戦略であると私は思った。


「それでスターツ城方面への軍は私が率いるとして、ロルト城方面の軍であるが、ルメイルが率いてくれ」

「私ですか?」


 よほど予想外だったのか、ルメイルが目を丸くして確認した。


「ああ、不満か?」

「いえ、クラン様が私に軍を率いよと仰せなら、力を尽くすだけでございます」


 ルメイルがロルト城を攻める軍を率いるのなら、私もロルト城を攻める軍に参加することになりそうだな。


 ルメイルが大将なのは少し意外だったな。

 立場がルメイルより上の者は何人かいるようだが、それだけクランから信頼を得ているという事だろうか。


 とにかくロルト城へはルメイルが率いて侵攻することが決定した。


 敵のロルト城には五千人ほどの兵がいるようで、ルメイルにはその倍の一万の兵が預けられることとなる。


 ロルト城からの進軍を防ぐのが目的なので、城の陥落はさせられないなら、させられなくていいようである。

 ただ敵はスターツ城への援軍に行くために、野戦を仕掛けてくるのは間違いない。

 そうなると敵の城にいる兵は、ほとんど出て来て戦ってくるだろうから、その野戦に勝てば城も取れると考えていいだろう。


「さて、倍の兵がいれば負けないとは思うが、ロルト城にいる兵は、スターツ城へと早く援軍を飛ばせるように、騎馬兵が多くいるとリューパが言っておった。練度も高い上に、地形的に平野での戦になるだろうから、数が多いからと言っても確実に勝てるとは言い切れん。そこでメイトロー傭兵団をロルト城への軍に加えようと思う。メイトロー傭兵団は野戦のスペシャリストだ」


 メイトロー傭兵団か。

 最強と名高い傭兵団だが、今のところ目立った活躍はしていない。

 まともな戦闘が起きていないから当然といえば当然なんだが。


 そう言えば、団長のクラマントを鑑定していなかったな。

 軍議の場にはいないので、後であったら鑑定してみよう。


 私たちはルメイルの軍に参加し、ロルト城攻めに参加することになった。



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