第102話 サムク城、鑑定
サムク郡長のフレードル・バンドルが縄にくくられた状態で運ばれてきた。
フレードルは長い顎髭を蓄えている男である。
あまり綺麗な髭ではない。かなりボサボサしている。
身長は平均的。
体格は筋肉質で戦えば強そうである。
クランの話によると、この男はどうあがいてもこちらの味方には付かないようだ。
殺すと面倒なことになりかねないので、とりあえず生かしてはおくようである。
脱獄されたりした場合もそれはそれで面倒なのが、判断が難しいところだ。
今回は結末が決まっていそうなので、私は鑑定はしないことにした。
「さて、フレードル……聞くまでもないかもしれないが、私の家臣になる気はないか?」
クランは一応尋ねてみるようだ。
「私めで良ければ……クラン様と戦場を共にしたいと思います……」
フレードルは予想外の返答をしてきた。
クランも少し驚いた表情を浮かべる。
あまり動揺する様子を見られてはいけないので、すぐにクランは表情を戻したが内心かなりびっくりしているだろう。
そのあとフレードルは、実は従兄と上手く行っていないだとか、バサマークのやり方には疑問が尽きないだとか、色々理由を説明した。
しかし意外だ、こちらに付くとは……
いや……待てよ……
そうか。
先ほどファムが報告していたが、あのサムク城には罠が仕掛けられていた。
多分フレードルは、ファムの手によって罠が解除されたという事を知らないのだろう。
このまま色々行ってクランを城の中へと誘導し、そのあと爆発させて亡き者にするつもりのようだ。自分の命も捨てる覚悟で。
ただ残念なことにすでに罠は解除されているので、その目論見が成就することはない。
「お主の気持ちは理解した。これからは……」
「あの少しいいですか?」
私はクランの発言を遮るようにそう言った。
「何だ?」
「私が雇った密偵傭兵ですが、サムク城にはとんでもなく危険な罠が仕掛けられていたそうで、それを全て見事解除したようです」
「何!?」
私がそう言うと、フレードルは驚愕し叫んだ。
「なので城にクラン様をおびき寄せて、亡き者にしようとしても無駄ですよ」
「ば、馬鹿な……」
慌てるフレードルを見て、クランが私に、
「もう少し詳しく説明してくれ」
そう言った。
罠の詳細の説明と、それからフレードルの目論見を私は説明した。
「ふむ。フレードルの様子から見て正しいのだろうな。知らなかったがそんな罠が仕掛けられているとは。油断は出来ないな。お主の雇った密偵傭兵には、特別報酬をやらねばならんな」
「ぐ……」
フレードルの表情が一気に青ざめていく。
一晩で城を落とされたが、あの罠でクランを嵌めれば、その汚名を雪いで死ぬことが出来ると思っていたのだろう。
「先ほど言ったことは全てデタラメという事でいいな?」
「…………」
フレードルはただただ憎しみのこもった目つきで、クランを睨み付ける。
こんなに悪意を直接ぶつけられたら、私なら動揺してしまうだろうが、クランはいたって平然としたようすだ。
流石に長年この政情不安定なサマフォース帝国という国で、生き続けてきただけのことはある。
「フレードルは牢屋に閉じ込めろ。何があっても外には出すな」
「了解しました」
「その他の家臣たちだが、私に忠誠を誓う者は登用する。誓わない者は、以前と同じくアルスが鑑定をして、有能な者は牢に閉じ込め生かしておく」
それからフレードル以外の家臣たちが続々と連れてこられた。
ベルツドまで逃げようとした者もいたが、多くの家臣が捕らえられた。
何人か逃げ切ったものと、それから戦いで死んだ者がいたため、全員が連れてこられたわけではないようだ。
何人かクランに忠誠を誓う構えを見せたものもいたが、そのほとんどが反発した。
中々フレードルは家臣に慕われているようである。
「では鑑定を行ってくれ」
「はい」
ワクマクロ砦より明らかに人数が多いので、かなりきつい思いをしながら、鑑定を行う。
全員を鑑定し終えた。
今回も桁違いに有能な者はいなかったが、平均70後半で武勇が88ある強力な武将を発見した。
それ以外にも殺すのは惜しいと感じた者が、七人いた。
やはり中々いないものである。桁違いに優秀な者というのは。
リーツ達と幼いころ出会えたのは、まさに僥倖だったな。
全て正直に伝える。
従わない者は、後日処刑することに決定。
しばらくサムク城で兵を休めつつ、次の戦略を練ることになった。
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