第101話 サムク城陥落

 サムク城周辺。時刻は夜。


 兵たちは、いつ出撃してもいいよう準備を完璧に整えていた。


 今回も私が突入するという事はないだろう。

 突入しないのは、クランやルメイルなどの指揮をする立ち場の者たちは皆同じである。


 門が開いたら、精鋭の兵たちから一斉に城に突入するという手筈になっている。


 ちなみに少し前ベンが私のところまでやってきて、門が開く直前にランブルを使うと伝えに来た。


 その事はすでにクランや、兵たちにも伝わっていることである。


 そして、ランブルの音が響き渡った。


 ここからでは暗いので良く見えないのだが、兵たちが一斉に動き出し始める。

 城への突入を開始したようだ。


「さて、すんなり落ちてくれればいいのだが」


 クランが呟く。


 ほどなくして、サムク城から怒声や悲鳴、敵が音魔法で指示を送っている声、爆発音など色んな音が響き渡る。

 ちなみに突入した魔法兵が爆発魔法を使用したのだと思う。


 今回はシャーロットやリーツは突入しておらず、現時点では待機している。

 ただミレーユが、「そろそろ戦わないと体がなまる」とか言って、突入に参加して行った。

 いつもやる気なさげだが、案外武闘家みたいな一面を持っていたようである。


 女性であるがミレーユは男顔負けのパワーを持っており、割と強い。

 今回の突入では、グレイブという、槍の先端が剣になっているという武器を持っていった。結構重いのだが軽く振り回していた。

 ミレーユは色んな武器を扱えるが、このグレイブの扱いが一番上手であるようだ。

 グレイブ以外にも、小型の触媒機を持っていたので、魔法も使える状態である。

 強いと言っても若干心配ではある。

 まあ、こんなところで死ぬような奴ではないとは思うのだが。


 それからしばらく私たちは待ち続ける。


 すると、兵士が一人入り込んできて、


「サムク城無事に陥落させることが出来ました! サムク郡長も捕縛いたしました!!」


 とかなりの速度で、城を落としたという報告が入ってきた。


「ご苦労だった! しかし随分と早かったな」

「城の中には恐らく本来は魔法罠が仕掛けてあったのでしょうが、その悉くが無効化されておりました。今回雇った密偵傭兵がいい仕事をしてくれたようでございます」

「そうか。今回はアルスの紹介してくれた人材のおかげで、あっさりとサムク城を落とすことが出来た。やはりお主は頼りになるな」


 相変わらず自分が働いたわけではないのに、褒められるのは若干変な気分になるな。


「では早速サムク郡長のフレードルをここまで連れてまいれ」

「承知しました!」


 伝令兵はクランからそう言われ、早速城に戻った。


 しかし今回も、郡長以外にも敵将を大量に捕らえたようだ。

 ということはワクマクロ砦で行った、選別を今回もする必要があるのか。

 正直あれはやりたくはないのだが……

 命じられたらそんなことも言ってられないがな。

 今から覚悟は決めておくか。


 そんな事を考えていると、メイド服を着た女が視界に入ってきた。


 ……ファムだ。


 仕事を終わらせて戻ってきたのか……

 速すぎるな。


 俺は周囲の人物に聞こえないよう。


「よくやってくれた」


 と声をかけた。


「ちょっと報酬上げてくれないか?」

「なぜだ?」

「いや、余計な仕事をさせられたからな。やっておかなければ、兵に大損害が出るかもしれないから、やっておいたんだが」

「もっと分かりやすく説明してくれ」

「あの城の地下に、特殊な爆発魔法のトラップが仕掛けてあった。あの城その物を大爆発させるような仕掛けだ。誰が作ったか分からんが、作った奴は凄く優秀な魔法兵だったのだろう。百年近く前に作られたトラップなので、もう死んでいるだろうがな。解除するのにだいぶ手間がかかったんだ」


 城その物が大爆発?


 陥落しそうになったら、城を爆破して兵隊を殺した後、その上で城を使い物にならないようにするという仕掛けか。

 それは相当厄介だな。

 解除してくれてかなり助かった。

 しかし手間がかかったという割には、時間通りに終わった気がするけど。


「あとでクラン様に掛け合う」

「頼んだぞ」


 会話をしていたら、サムク郡長が連れてこられた。

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