第99話 交渉成立

 私は軍議が終わった後、ファムを呼び出し交渉を開始した。


「今回やってもらいたい依頼は、サムク城の城門の開門、それから魔法罠の解除、魔力水保管庫の破壊だ。可能か?」

「三つか。まあ、可能だろう。サムク城は一度見たことがあるが、それほど防備が固い城ではなかった。忍び込むのは容易だ」

「報酬はいくらを希望する?」

「金貨二百五十枚。前金として金貨五十枚いただこう」

「分かった。前金はクラン様に払ってもらう。それから、工作の完了はどうやって知らせてもらおうか」

「それなら問題ない。ベンを外で待機させておき、音魔法で伝える」

「分かった」


 交渉はそれで終了した。

 それからクランに前金をお願いしたところ、予想通りOKが貰えた。


 それから、途中にある魔法罠への警戒は怠らずに、サムク城付近にまで軍を進軍。広い草原があり、そこに陣を張った。


 門が開いたという報告が入れば、すぐにでも城に侵攻できるくらいの位置に陣を張っている。


 敵兵は外には出て来ない。籠城する構えであるようだ。

 サムク城にベルツドからの援軍が入ったという情報はない。

 なるべく少ない兵で我々を足止めすることで、ベルツドが落ちる確率を下げる戦略だろうと、ロセルやミレーユは予想していた。

 サムク城の兵は恐らくではあるが、死闘になることを覚悟している。士気はかなり高いはずだ。死ぬのを覚悟した兵は非常に強い。それが籠城しているとなると、正攻法では落とせないとは言わないまでも、かなりの時間足止めをくらった上に、自軍の兵をだいぶ減らされていただろう。

 工作をして落とすのがやはり一番いい方法であったようだ。


「クラン様からさらに注文が入った。開門は夜にして欲しいとのことだ」


 日が明るいうちに開門するより、夜にした方がより効果的な奇襲になる可能性が高い。


「最初からそのつもりだった」

「そうか」


 ファムはそう言った。


「じゃあ、門に忍び込んでくる。工作を終わらせたら、ベンに連絡をさせる。ベンの顔は覚えているな?」

「えーと……」


 そう言えばかなり地味な顔をしていた。顔ははっきりとは覚えていない。


 しかし、名前が確か凄く個性的だったという事は覚えている。

 アレクサンドロス・ベルマドルドだったか。


 鑑定してみたらそんな名前の顔の地味な男が、ベンと名乗ってきたらそいつがベンであると考えて間違いないので大丈夫か。


 ファムには顔を覚えていると返答した。


 俺の返答を聞くとファムは城に向かっていった。


 多分ファム以外の仲間もどこかにいて、一緒に潜入するだろう。


 俺は成功を祈りながら、朗報が来るのを待った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る