第58話 悩んだ末
このステータス。
統率が高く、それ以上に知略103は超高水準だ。現時点での数値は100を超えており、ロセル、リーツよりも上である。
武勇も70と魔法適性がずば抜けて高くない女性にしては高い。恐らくこの身長の高さに加え運動能力も高いから、この武勇になっているのだろう。
政治は低い。まあ、確かに協調性とかがあるタイプには見えないからな。
ステータスは良い、良いのだが、めちゃくちゃ気になる点がある。
野心だ。100もある。
これ99がカンストだと思ってたが、100もあるのか。
これは凄まじい数値である。はっきり言って、こんなに高い者は初めて見た。
高くて驚いたリシアですら80だ。それより20も高い100とは……
味方にしてもいずれ裏切られる予感しかしないというか。
うーん、困ったな。
はっきり言ってこのステータスは、一番欲しい人材である。
この知略の高さ。年齢的にも恐らく色々経験した上でこの数値になっているのだろう。将来性はともかく現時点の能力は、ロセルよりミレーユの方が上である。
ロセルもミレーユから色々学べるかもしれない。リーツに代わる先生のような役目も期待できる。
彼女を家臣にするメリットは大きいと思うのだが、それでもこの野心の高さは……
悩むなこれは。
こんな状況じゃなかったら、あっさり断ってたかもしれないけどなぁ……
野心だけで完全に判断は出来ないかもしれないし、ミレーユについて色々尋ねてみるか。
「出来ればあなたの素性について教えてもらいたいのだが」
「素性ね。いいだろう。どこのどいつとも知れないやつを家臣にするなんて、あり得ない話だからな」
私の場合、リーツとシャーロットは素性が分からない状態で家臣になるよう誘ってたが、今考えればあれは不用意だったかもしれないな。
まあでも、あれだけの人材を逃すわけにはいかないので、あの時はあれで良かったかもしれない。
ミレーユは己の素性を語る。
ミーシアンで貴族に成り上がり、戦でも活躍していたらしい。
珍しい女領主として地元では非常に有名だったそうだが、私は知らなかった。
信憑性には疑問が残るな。ミーシアンでもランベルクがある場所より、だいぶ遠い場所の領主だったので、聞いたことがなかっただけの可能性もある。領主であった期間も一年くらいと相当短いうえに、領地もランベルクほどの小領だったようなので、あくまでローカルな知名度しかなかったとしても、おかしな話ではないか。
この能力値なら、もしかしたらずっと領主だった場合、ミーシアン全土に知られる英傑になっていただろうが、何らかの理由で追放されて今に至ると。
理由に関しては本人は不当な難癖をつけられたと、嘘か本当か分からない説明をしていた。
さらに彼女には弟がいて、それがバサマークの右腕のような立場になっているらしい。
その話を聞き、私はクランから言われたことを思い出した。
バサマークの右腕に、トーマス・グランジオンという男がいるという話だ。クランの話では、非凡な頭脳を持ってるという。ミレーユの苗字はグランジオンなので、その男がミレーユの弟なのだろう。
それが本当であれば、敵のやり方もある程度知っているはずである。それに加えてこの知略の高さなので、本当に軍師としては申し分のない人材なのだが。
今回の話で敵側から追放されたというのが、気になる。
元々女の身で成り上がったという事は、能力は相当高く評価されていたはずだ。その彼女を追い出すという事になったという事は……
やっぱり何か問題があるんじゃなかろうか?
私は少し悩む。
「あの人材の採用についてアルス様に意見するのも、恐れ多いのですが、彼女からは少し危険な感じがします。やめておいたほうがいいかもしれません」
「危険な感じとは?」
「うーん、具体的には言えませんが……勘といえば勘ですがね。本人は難癖をつけられたと言ってますが、敵からも追い出されたという事を考慮すると、何かやっている可能性がありますし……」
リーツは反対のようだ。
私も今回は慎重に考える。
「坊や、早く答えてくれないかねー。こことアルカンテスって結構遠いから、割と疲れてんだよなー」
ミレーユにせかされる。
しかしここで雇わなければ、もしかしたら敵に付かれる可能性もあるかもしれないな。
ミレーユが追い出されたのは、だいぶ前である。一度追い出した敵もこの状況では再びミレーユを登用するかもしれない。
そうなると問題しかない。
よし、ここはミレーユを家臣にしよう。
これだけの人材だ。逃すのはやはり惜しいからな。
人格に問題があるならば、上手く使えばいいだけのことだ。
仮に手におえないと思えば、その時はその時でやりようはある。リシアみたいに婚姻するとなると話は別であるが、あくまで家臣にするだけだからな。
「調べた結果、あなたは非常に優秀な人材であると分かった。家臣になってほしい」
「お、マジか。坊や本当に人を見る目があるんだねぇ。そのつもりで来たんだから、喜んで家臣になるよ」
リーツが「大丈夫なんですか?」と焦りながら耳打ちしてきた。
「彼女に危険性は私もあると思うが、素晴らしい人材なのは間違いない。ここは雇うのが最善だと判断した」
「うーん……まあ、そうですか。分かりました」
完全には納得してくれていないようだが、ここは引いてくれた。
今日は夜なので一泊して、ミレーユを屋敷に連れて帰った。
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