第50話 クラン
ルメイルから褒美をもらって数日経過。
現在、十二月十五日、夏真っ盛りの時期。ランドルフは冬は過ごしやすいが、夏は嫌になるくらい暑い。前世にあったクーラーもこの世界にはなく、秋にならないものかと思いながら、日々を過ごしていた。
「アルス様、ルメイル様から書状が届きました」
家臣が書状を持ってきた。
予想はついている。恐らくこの前言っていた、パーティーの件だろう。
中身を読んでみると予想は当たっていた。
パーティーの開催日が十二月三十一日と、一月一日に決まったらしい。
この世界にも年越しを祝う風習がある。それに合わせてパーティーをするのだろう。そう考えると結構派手なパーティーになりそうだな。
場所はペレーナ城である。
ちなみにパーティーには、私以外は参加できないと書いてある。まあ、本来は私も参加できるような身分ではないので、それは仕方ないかもしれない。
パーティーには参加できないが、護衛もかねてペレーナには一緒に行く。
出来ればリーツたちと一緒に年を越したいが、今年は仕方ないか。
ペレーナまでは、馬で三日ほどの時間を要する。
念のため五日前の十二月二十六日の朝に屋敷を出て、ペレーナに向かった。
今の私は一人で馬に乗ることが出来る。
自分用の馬も飼っており、今回はその馬に乗ってペレーナに向かっていた。
赤毛で小さめの馬だ。大人しい性格で扱いやすい。
乗馬というのは思った以上に体力を消費するもので、今の季節は夏。私は長距離を馬で走り切ったことはない。
ペレーナに付くころには私はヘトヘトになっていた。
到着したのは十二月三十日。予定より少し遅くに到着。
ペレーナの町は、カナレと同じく城郭都市である。規模はカナレより少し大きい。カナレと同じく城郭外にも町がある。
すぐに宿をとって一休みする。
当日に到着していたら、かなり疲れている状態でパーティーに出なくてはならなかったので、一日休むことが出来てよかった。
そして当日十二月三十一日の夕方ごろ、パーティーが始まる時間になった。
城の前までリーツたちに護衛をしてもらう。
「では行ってくる」
「はい……」
パーティーに参加できるのは、今回は私だけである。リーツは離れるのが不安なようだ。
流石にクランが来るようなパーティーなので、護衛はしっかりしている。門の前の兵も非常に多い。パーティー中に襲われる心配などはしなくていいだろう。
私自身がパーティーで思いがけず非礼な行動をとってしまわないか、それが不安である。
私はリーツたちと別れてペレーナ城へと入城する。
最初門番に止められるが、今回は入城の際に必要な手形を書状と一緒に貰っていたので、簡単に入ることが出来た。
ペレーナ城はカナレ城と同じく古めの城だった。大きさはカナレ城より僅かに大きいように見える。
門を通り城の入り口に近づくと、ザワザワという音が聞こえ始めてくる。
もしかして遅れてしまったのか? 私は焦って急ぎ足になる。
城の中に入ると、大勢の貴族たちがイスに座り雑談をしていた。
料理が運ばれていないため、まだパーティーは始まっていないようだ。私はほっとする。
私が城に入ると、何人かの貴族たちが、なんだこのガキは、という表情で私を見てきた。
ここに来ている貴族たちは、ほぼ私より格上の貴族なのだろう。何となく居心地の悪さを感じた。
「おお、アルスよ! 来たか!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
声の聞こえた方を見ると、ルメイルがこちらに向かって歩いてきていた。
いつもルメイルの傍にいるメナスは、今日はいない。彼もパーティーに招待されていないのだろう。
「アルスにとって知らない者たちばかりだろうから、手短にだが説明する。まず、あそこに座っている小さめの男がペレーナ郡長のルルーク・ドーランであるな」
私はペレーナ郡長ルルークを鑑定してみた。
小柄な体躯だが統率と武勇が高い。政治もそこそこ高いが、知略はあまり高くない。
確か彼も父と同じく成り上がりだったな。
中々有能そうな男なので、彼が味方になった事は資源の話を抜きにしても大きいだろう。
ルメイルは次々に、有力な貴族たちを紹介していく。
流石に郡長格の貴族たちとなると、ほとんどが一般人に比べると有能なステータスを持っていた。たまに大丈夫かこいつと思うものもいたが。
ただ突出した能力を持つものはいなかった。そこは少し心配になるところである。
「まだクラン様は来ておられないのですか?」
「来てはおられるだろうが、今は会場にはおられないだろう。パーティーが開催される時、スピーチをされるだろう」
スピーチをするのなら、その時に鑑定は出来るな。どんな人物か楽しみである。
紹介を終えた後、私はルメイルの右隣の席に座った。ルメイルの左隣の席には、ルメイルの正妻が座っていた。
今回パーティーに参加しているのは、有力な貴族その妻、それからその子供や、兄弟などだそうだ。
まだ鑑定していない者も大勢いるので、鑑定をしようとすると、シンバルを叩いたような音が響き渡った。
雑談をしていた貴族たちが静まり返り、立ち上がった。私も周りに流されて立ち上がる。
隣のルメイルが、
「来られるぞ」
と囁いた。
コツ、コツ、と静寂の中、足音が近づいてくる。
大広間の奥にある扉が開いた。
金髪の男が入ってくる。
それと同時に貴族たちが頭を下げ始めたので、私も慌てて下げる。あれがクランだと思うのだが、よく確認する事は出来なかった。
「面を上げよ」
低く威厳に満ちた声が響き渡った。
私は頭を上げる。
豪勢な服を身につけた金髪の男が、堂々と貴族たちの前に立っていた。歳は四十代くらい。
顔には複数の傷が入っており、生まれのいい貴族であるが、幾多の戦いを潜り抜けて来たということが、伺い知れる。
私は早速クランを鑑定してみた。
クラン・サレマキア 45歳♂
・ステータス
統率 99/99
武勇 97/97
知略 78/79
政治 80/81
野心 93
・適性
歩兵 A
騎兵 S
弓兵 B
魔法兵 B
築城 A
兵器 C
水軍 A
空軍 B
計略 C
想像以上のステータスを持っていた。
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