第48話 褒美
私たちは呼び出しを受けて、カナレ城へと赴き、ルメイルと面会していた。
今回ルメイルと面会しているのは、私一人である。
部屋の中には、ルメイルの横にメナスが立っているくらいで、ほかには誰もいない。
「よく来たアルス。改めて言うが、今回の件は大儀であった。お主のおかげでペレーナ郡はクラン様に付くことを決めたぞ」
「ルメイル様とクラン様のお力になれたのなら、嬉しい限りです」
「うむ、今回の件は本当に助かった。そういえば話してなかったが、ペレーナ郡からは重要な戦略資源が取れるのだ」
「戦略資源……何が取れるのでしょうか?」
「爆発の魔力石という非常にレアな魔力石だ。ミーシアン内ではペレーナ郡でしか取れず、サマフォース全土でも、ペレーナ郡を含む、四つの郡だけしか取ることが出来ない。爆発の魔力石は魔力水に加工すると、強力な魔法が使えるようになり、さらに強力な兵器の材料にもなる」
ペレーナ郡にはそんなものがあったのか。
じゃあ、ペレーナ郡が仲間になったという事は、だいぶ有利になったのではないだろうか。
いや、そうでもないか。ペレーナ郡は長いあいだバサマーク側に付いていたわけだし、もしかすると爆発の魔力石を今まで提供し続けていたのかもしれない。
「ただ、ペレーナ郡長の話によると、バサマーク様に爆発の魔力石を提供し続けていたらしいので、必ずしもこちらが有利に立ったというわけではないがな。関所を設けて、ペレーナ郡から人を通さないようにしておったようだが、それでも密輸をしていたみたいだ。中々の量、密輸していたようだから、これで戦に有利に立てるとは言い切れんとこだ。まあ、当然、ペレーナ郡を押さえられ続けるよりかは、状況は明らかに好転はしたのは間違いない」
私の予想通りのようだな。
「とにかくお主には褒美を取らせる。メナスもってこい」
「かしこまりました」
ルメイルは傍らに立っていたメナスに命令をする。
メナスを部屋を出てから、箱を二つ台車に乗せて持ってきた。
箱はそれぞれ大きさが違う。小さめの箱と、それより一回り大きい箱とあった。
「箱の中には、金貨が三百枚入っておる。これを褒美として取らせよう」
「さ、三百枚もですか」
褒美で金貨が貰えるだろうとは思っていたが、三百枚は思ったより多かった。
五十枚くらいだと思っていた。
「うむ、今回はクラン様からも褒美が出た。恥ずかしい話、私は懐事情もあって、それほど大金は出せんのだ。その小さめの箱が私からの褒美で、金貨五十枚入っておる。大きめの箱にはクラン様から報酬、金貨二百五十枚が入っておる」
クランからも報酬が出たのか。
センプラーを統治しているクランはかなりの金持ちなのだろう。二百五十枚くらいは軽く出せるという事か。
「ありがとうございます」
私は礼を言って褒美を受け取った。
台車ごと貰ったのだが、それでも運ぶのは大変そうだ。
「うむ、それともう一つ伝えねばならんことがあったが、クラン様がお主にお会いしたいそうだ」
「え? 私にですか?」
今回の件で活躍したとはいえ、私とクランの身分の差は非常に大きいため、会いたいと言っていると聞いて、私は驚いた。
この時代の貴族の格は、治めている領地の質により決まる。
かつては爵位によって決まっていたが、今では完全に形骸化しており、あるにはあるのだろうが、ほとんど使われる機会はなくなっている。
クランの治めるセンプラ―は、ミーシアンの中でも最高の領地の一つだ。
それに加え、前総督の息子である。弱小領主の私とは、圧倒的な差があるのだ。
それなのに、わざわざ会いたいというのは意外である。何か裏がある可能性もゼロではない。
「実は、クラン様にお主のことをしゃべっていると興味を持たれてな。お主には人を見極める特別な才があるとは、レイヴンから聞いていたのだ。リーツや、シャーロットの才を見出したのはお主であると、自慢げに語っておったな。私もそれを話したところ、クラン様は興味をお持ちになられたのだ」
私の鑑定を話したのか。
確かに鑑定は非常に有用な能力だ。興味を持たれても不思議ではない。
「今度、ペレーナ郡の調略に成功したのを祝うパーティーを行う。ずっと敵だったペレーナ郡は、まだまだ本当に味方になったかどうか懐疑的にみられているから、それを払拭するために行うパーティーである。遊びで行うわけではない。そのパーティーにお主も来いとのことだ。会いたくないなら来なくてもいいとおっしゃられたが、当然来るであろうな?」
「はい、ぜひ行かせていただきます」
私は二つ返事で同意した。
クランは一度鑑定しておきたかった相手だ。
さらに今回のパーティーには、兄側に付く有力貴族たちが多く集まるだろう。どれだけ有能な人物がいるのか知りたかったところだ。このチャンスを生かさない手はない。
「よし、ではクラン様には行くと報告しておこう。では最後に今回は本当に大儀であった。これからの活躍にも大いに期待しておるぞ」
「はい、ルメイル様、クラン様のためにこれから力を尽くします」
褒美を持って私たちは城をあとにした。
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