第32話 カナレ城

 手紙が届いてから、私はカナレの町へ向かった。


 同行するものは、リーツとシャーロット、その他、年齢が上の家臣たちだ。


 シャーロットは連れて行くべきか悩んだが、どうも戦場での活躍やその掴みどころのない性格から、他家の者から恐れられているらしい。彼女を従わせているというところを見せることにより、他家から認められる可能性が高まるということで、連れて行くと決めた。


 ちなみに返答の手紙は出していないので、向こうは私が来ることを知らない。

 至急集まれと貰った手紙に書いてあったので、貰ったあと、すぐにカナレに向かった。そのため、手紙を出している時間などなかったからだ。


 カナレの町に到着し、城郭に囲まれた区画へと入る。

 その中を進み、城へと到着した。


 そこで門番に止められる。


「この先はカナレ城、郡長様がお住まいになっている場所です。許可のないものを通すわけにはいきません」


 許可証などは貰っていない。

 どういうことだ?


「レイヴン様は顔が知られていますで、そのまま通る事が出来ましたが、アルス様では厳しいですね……」

「何と。通れないのか?」

「いえ、こちらにも、名の知れたシャーロットと、それから私もそれなりに知られてはいるのですが、門番の人は知らないみたいですね。城から誰か重臣を呼んできて貰えば、通れると思います」


 私はリーツのアドバイス通り、


「私はローベント家の嫡男の、アルス・ローベントだ。訳あって父レイヴン・ローベントが来れないので、嫡男の私がルメイル・パイレス様の招集に応じてここに来た。疑うのなら一度城に私の話を伝えて、誰か重臣を連れてきて確認させてくれ。私は知らずとも家臣たちは知っているだろう」


 そう言った。

 門番は私の言葉を聞いて、少し困ったような表情になる。対応に戸惑っているみたいだ。外見的にまだ若いように見えるので、どうすればいいのか分からないのだろう。

 すると、少し年配の兵がやってきた。

 門番はその兵に事情を伝えると、その年配の兵がこちらを確認してきた。

 その瞬間、目を丸くして、


「あ、あれは! ランベルクの青い死神!!」


 そう叫んだ。

 シャーロットを見ながら言っているようだ。


「その呼び方、可愛くないからやめてほしい」


 不愉快そうな表情でシャーロットは呟く。

 そんな物騒な二つ名がついていたのか。初めて聞いたぞ。


「そ、それにあっちのマルカ人は、ランベルクの残酷鬼!」


 今度はリーツを見てそういった。


「残酷なのか?」

「……いや……特別残酷な真似をした覚えは……まあ、戦場なので殺生はしていますが。不本意な呼ばれ方ですね」


 リーツも不満顔である。


 そのあと、二人を従えている私がローベント家の嫡男であると、分かってくれたみたいで、城の入り口まで案内してくれることになった。


 カナレ城は古い城で、大きな城ではなく小さめの城である。城と聞いてイメージする豪華絢爛さとは無縁の城であった。


 城の入り口まで行くと、中年の男が入り口の前に立っていた。見るだけで高価と分かる衣装を着ている。パイレス家の家臣だろうか。それも結構立場が上の。私たちを案内している兵士が、「少しお待ち下さい」と言って、その男に話しかけに行った。


 話をした後、その中年の男が慌てて私たちの元に駆けて来て、


「レイヴン様がご病気になったとは本当ですか!?」


 と尋ねてきた。


「本当ですが、あなたは?」

「ああ、失礼しました。初めましてアルス・ローベント様、私はパイレス家、家臣の一人である、メナス・レナードでございます」


 やはりそうだったか。


 私は鑑定をしてみる。


 メナス・レナード 40歳♂


 ・ステータス

 統率 71/71

 武勇 70/70

 知略 75/77

 政治 78/78

 野心 25

 ・適性

 歩兵 B

 騎兵 B

 弓兵 A

 魔法兵 C

 築城 B

 兵器 D

 水軍 D

 空軍 D

 計略 B


 中々の能力値だな。ずば抜けて優れた点はないが、どれもそれなりに優秀な値である。

 適性も戦闘系は大体Bで得意としているようだ。


「すでに聞いているようですが、アルス・ローベントです。父の代理できました。後ろの者たちは私の家臣です。一人では心許ないので同行させました」

「ああ、見たことありますよ。戦場で一緒に戦ったこともありますね」


 リーツは「はい」と言いながら頷いたが、シャーロットはピンと来ていないようで、首を傾げている。

 メナスは地味な顔立ちをしているので、覚えられないのも仕方ないかも知れない。失礼なのは間違いないが。


 メナスはシャーロットの態度を気にする様子はなく、話を始めた。


「レイヴン様がご病気になられるとは……どんな病気なのでしょうか?」

「医者の話では、グライ病だと……」

「グ、グライ病!? そ、それではもしや、戦に出れぬ状態なのですか!?」


 病気の知識があったのかメナスは驚愕した。


「ええ、医者には安静にしるべきだと言われました」

「何と……こんな時に……これは非常に痛いですぞ……ルメイル様も嘆かれることでしょう……」


 メナスは非常に落胆した様子だ。


「と、とにかくルメイル様の元へとご案内致します。まだほかの領主様たちがお越しになっていないので、ルメイル様からの話は、全員がお集まり次第行いますが、まずは一度お会いなってください」

「分かりました」


 私たちは郡長ルメイルがいる場所へと、案内された。




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