第15話 軍師
村に向かい、例のキーシャという一家が住む家へと向かった。
最初に村に訪れた時は、領主の息子とバレないようにしていたが、今は変えずに行っている。
というのも、六回目村で人材探しをしていた時、一度バレて騒ぎになったのだが、何度か行っていると、私が村に来るのにも慣れたのか、特に騒ぎが起きなくなっていた。そのため、変装する必要がなくなったのだ。
今は、リーツと一緒に歩いているが、これも今日が初めてというわけではないので、特に村人に群がられたりはしない。
「ここがキーシャ家の家ですよ」
少しボロい家に到着した。この村としても、立派な方に入る家ではない。
私は扉の前に立ち、中に入ろうとする。
すると、扉が勢いよく開かれ、
「う、うわぁ〜〜ん!!」
家の中から、大泣きしながら子供が飛び出して来た。
細い体の中性的な子で、性別はどちらか一見分からない。恐らく男の子だろう。
髪は金色で、ボサボサして、手入れがされていない。
今の私より背は小さく、年下に見える。
その子は私を一瞥すると、泣き続けながら勢いよくどこかに走り去っていった。鑑定する暇もなかった。キーシャ家の子だろうか。しかし、子供は十二歳と十一歳と、リーツは言っていたような……。
いや、そういえば三兄弟と言っていたか。
強いと噂になっている兄弟には、下にもう一人弟がいたんだな。
三男はあまり強くは見えなかったが、まあ、まだ幼い。これからいくらでも成長できるだろう。
「コラ、ロセル!! 待て!!」
今度は怒鳴り声を上げながら、大柄の男が家から出て来た。
男は私に気づき、
「お前さんは……あ、もしかして領主の息子さんですかい!?」
服装を見て私が領主の息子だと気づいたのか、男は血相を変える。
「いかにも私は領主息子のアルスだ」
「俺のような家に何のようで来たのですかい……?」
「この家の息子が非常に優秀だと聞いて、一度見ておきたいと思って来たのだ」
「あ、ああ、それはそれは、歓迎します。俺はグレッグ・キーシャといいます。どうぞお入りなさってください」
かなり歓迎しているようだ。
マルカ人のリーツを見てあまりいい顔はしなかったが、明かにリーツは良い身なりをしているので、家臣であるということが分かったのか、言及はしてこなかった。
ちなみにグレックのステータスは、武勇が少し高いくらいで、あとは平凡だった。
「ところで先ほど、泣いて出て来た子がいたのだが、あの子はグレッグの息子か」
「あいつはロセルっていうんでさぁ。三男坊ですが、上二人に比べて出来が悪くてですねぇ。体は弱いしすぐ泣くし、どうしようもないってもんでさぁ。さっきだって、五歳にもなって寝ションべンしやがって、叱ってたら泣いて逃げ出したんだ。ありゃあ、どんな大人になるんだか、心配でならねぇ」
「まだ五歳なら、これからどうにでも成長するだろう」
「そうですかねぇ。しかし、さすが領主の息子様だ。ロセルとは比べものにならねーくらいしっかりしていらっしゃる。年齢もあまり変わらないくらいなのになぁ」
しっかりしているのは転生しているからなんだけどな。前世の私も五歳でオネショをしたことぐらいあった気がする。
そのあと、私は長男と次男に引き合わされた。
私を領主の息子だと紹介する。
息子の名は、長男がガトス、次男がマルクス。
確かにどちらとも、背が高く、年齢にしては体もガッチリしていた。
ステータスを見たが、想像していたより良い数値だった。
統率の限界値はどちらも40台で、将の器ではなかったが、武勇の限界値が、ガトスが77、マルクスが75、現在の数値でも、ガトス67、マルクス65といい数値だった。知略と政治はどちらも低い。
適性だが、ガトスの歩兵適性がA。ほかは全部CかD。マルクスは弓兵適性がA。ほかは全部CかDだった。
ガトスは接近戦に、マルクスは弓での遠距離攻撃に優れているといえるだろう。
全然ダメでも驚かなかったのだが、噂も当てになる時があるようだ。
「どうですか?」
「この二人、中々いいぞ。将来兵士になりたいと望むのなら、明日からでも練兵場で訓練させるべきだろう」
リーツの質問に私は答えた。
「おお、良かったな。お前ら兵士として活躍して、名を上げたいって言ってたからなぁ!」
グレッグは狩人をやっているらしいが、息子がどちらとも兵士になるのは、むしろ歓迎しているみたいだった。息子二人も私に評価されて、喜んで練兵場で訓練をすると、意気込んでいる。
「早速明日から来るといい」
「「はい!!」」
気持ちのいい返事を聞いたところで、私は家を出る。
そこで、先ほど泣きながら家を出ていった三男のロセルが、家に戻ってきており、ちょうど鉢合わせになった。
兄二人が優秀なら、三男のこの子も優秀なのかもしれない。
軽い気持ちで、ロセルのステータスを調べてみた。
私はそのステータスを見て息を呑んだ。
ロセル・キーシャ 5歳♂
・ステータス
統率 35/88
武勇 11/32
知略 45 /109
政治 32/95
野心 21
・適性
歩兵 D
騎兵 D
弓兵 C
魔法兵 C
築城 A
兵器 A
水軍 C
空軍 A
計略 S
将来大軍師になりそうな、そんなとてつもない知略を秘めていた。
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