第14話 一年経過

 シャーロットが魔法兵として、ローベント家に仕え始めて一年が経過した。


 ランベルクがあるカナエ郡は、ミーシアン州の一番西側にあり、サンツ州との州境に位置している。そこで領土問題を抱えており、割と頻繁に小競り合いが起きている。その度に父は、戦に駆り出されていた。

 そのため一年で、五回くらい戦に行く必要があった。


 シャーロットの戦場での活躍は、凄まじくローベント家にとってなくてはならない存在になっていた。


 彼女の武勇は一年間で、101まで上昇した。さらにいつのまにか、ローベント家に仕えている魔法兵たちのリーダー的存在となっており、統率も73まで上昇していた。

 あの掴っみどころのない性格で、どうやって他人を引っ張ているのか、謎である。


 そのセンセーショナルな活躍に、他家から引き抜きをかけられたりしたそうだ。全部断っているそうだが。

 断った理由は知らないが、私に恩を感じているのだったら嬉しい。


 リーツは相変わらず、私の教育係を務めていた。

 そのため、シャーロットのように戦場で大活躍をして、名を上げるということはできていない。


 間違いなく実力はあるので、戦場に出れず歯がゆい思いをしているのではないかと思い聞いてみたが、将来の当主の教育係以上に名誉な仕事はないので不満はないと言った。嘘である可能性もあるが、私の勘では本心で言っていると思った。


 そして最近、めでたい出来事があった。


 私に、双子の弟と妹が出来た。


 生まれたのは今より二週間ほど前と最近である。私の今の年齢は六歳なので、歳はそれなりに離れている。まあ、前世の記憶が残っているので、実際はもっと離れているのだが。


 名前は、弟がクライツ、妹がレン。

 クライツが兄で、レンが妹である。


 私は二人を鑑定して、ステータスを見た。


 クライツが、

 ・ステータス

 統率 1/82

 武勇 1/89

 知略 1/33

 政治 1/21

 野心 77

 ・適性

 歩兵 S

 騎兵 B

 弓兵 A

 魔法兵 C

 築城 D

 兵器 D

 水軍 D

 空軍 D

 計略 D


 こんな感じで、レンは、


 ・ステータス

 統率 1/22

 武勇 1/21

 知略 1/91

 政治 1/85

 野心 33

 ・適性

 歩兵 D

 騎兵 D

 弓兵 D

 魔法兵 D

 築城 C

 兵器 B

 水軍 C

 空軍 B

 計略 A


 こんな感じである。

 まだ赤ちゃんなので現在のステータスは、1だがどちらも非常に優れた潜在能力を持っている。


 兄のクライツは、父に似たのか優れた統率力と武勇を持っている反面、知略と政治力は弱い。歩兵適性がSなので剣や槍の扱いは、非常に長けているだろう。


 逆に妹レンは、知略と政治力が高く、統率と武勇は低い。計略適性がAで軍師にもなれる潜在能力を秘めている。


 双子で欠点を埋め合わせる感じになるのだろうか。しかし、貴族の家に生まれた女は、他家に嫁ぐために育てられるので、中々レンの方がローベント家に残り続けるというのは、難しいかもしれない。

 私が父に、レンは頭がいいので、軍略を学ばせるべきだというのもありかもしれない。


 しかし、果たしてそれがレンのためになるのだろうか。そうすると、今度は結婚することが難しくなる。彼女の幸せを考えると、間違っているかもしれない。

 どんな子に成長するかで、どうするかは決めればいいか。


 それともう一つ気になるのは、クライツの野心の高さだ。77もある。

 野心が高い者は裏切り易くなる。少しでも境遇に不満を持たせてしまえば、敵に寝返ったり、反乱を起こしてきたりする可能性がある。

 60を超えたら、高い方だろうか。70台となると、あまり見かけないレベルである。


 クライツの性格をきちんと掴んで、コントロールする必要がありそうだ。



 ○



「今日はここまでにしましょう」


 リーツが剣を下ろしてそう言った。


 私は練兵場で、リーツに剣を教わっていた。


 いざという時に剣くらい扱えないとまずいので、教わることにしていた。


 あまり上達速度は速くない。

 リーツと父は、六歳なのでそんなものだというが、私には自身の至らなさがよく分からる。

 どうも私は、武芸の才は父親から受け継がなかったみたいだ。


 まあ、戦場で敵をバッタバッタ叩き斬るほどの、武力を手に入れたいというわけではないので、そこまでの才能は必要ない。そういうのは、才能のあるものに、任せればいいのだ。


 私は練習でかいた汗を拭きながら、開き直った。


「アルス様、お耳に入れたいことがあるのですが」

「何だ?」

「最近、村にキーシャ家という狩人の一家が引っ越して来たらしいのですが、そこには三人兄弟がいるようで、上二人が十二歳と十一歳ながら、背が高く力強いので、将来は凄い男になると、評判になっているようです。一度、見に行ってみてはいかがでしょうか?」

「そうだな……」


 だいたいこういう場合は、大したことないというパターンが多い。

 それでも、村にいるというのなら、労力もかからないし見に行くくらいはした方が良さそうだな。


「行ってみようではないか」

「かしこまりました」


 私はリーツと共に、ランベルク村に向かった。




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