序章 第2章 総合魔法学院入学

第7話 半年後

 両親より総合魔法学院の話を聞いてから半年の月日が流れた。


 俺はその間に、母さんから筆記試験で出てくる計算、ファイブネス王国の歴史、魔法基礎と文字の読み方について教わっていた。勉強を教えている時の母さんは、いつもみたいに優しくなくとても厳しくかなりのスパルタだった。


 父さんからは、一週間に二度ほど打ち合いをして、実践での感を養っていった。父さんには、一度勝っていて、その動きにも目が慣れていたのもあり、強化魔法なしに何処まで戦えるのか試したりもした。能力だけなら父さんの方が圧倒的に上だったが、攻撃が当たらなければ意味をなさない。そのため、俺は父さんの攻撃をかわし続けて、その隙を見つけカウンターの一撃を叩き込むことだけを考えてこの半年間の特訓を行ってきた。そのおかげで、動体視力だけなら前世並みの所までもってくることが出来た。





 そんなこんなで、俺は今入学試験を受ける総合魔法学院がある王都セミアリアへと向かう馬車の中にいた。村を出てからすでに半日が経っている。


「ママ、おしりが痛いよ」


「ケンちゃん我慢しなさい後もう少しで王都に着くからね」


 この馬車という乗り物は、クッションや衝撃吸収をしてくれるバネはついておらず揺れや衝撃が直接伝わってくる。そのせいで、おしりが痛くて仕方がなかった。


 俺達が向かっているセミアリアはファイブネス王国の王都である。この王国は俺の住んでいたハイネ村とミルシャ村、サレン村、フォリオ村と王都で構成されている王国で、他と比べるとかなり小さな国である。王都からだとどの村に行くのも馬車で一日から二日あれば着くほど近い距離にある。


 馬車に揺られながら、進んでいると、王都の門が見えてきた。


「ケンイチ見えてきたぞ。あれが王都セミアリアだ」


 父さんは、指を指して説明してくれた。俺は、やっとこの馬車から降りられると思いほっとした。


 俺達が王都に着いたのは、日が沈み始めた頃だった。門の所には、外から帰ってきた冒険者や、行商人とかで列が出来ていた。俺達も列に並んで数分ほどで番が回ってきた。


 門の所では、門番さんによる身分確認が行われていた。俺達も門を通ろうとしたところで門番さんに止められた。


「身文書のご提示をお願いいたします」


 門番さんから身文書の提示を求められ、父さんの冒険者カードを見せることで簡単に通してもらえた。俺と母さんには身文書の提示は求められなかった。


 王都に入ってすぐ俺は、その街並み目を奪われた。中央には、王が住んでいるお城があり、英国風の街並みを見て、


「ママ、パパ王都ってすごいね。僕たちの村とはぜんぜん違うよ」


 俺はかなり興奮気味に両親に話しかけていた。そんな俺を見て、すごくうれしそうな顔で母さんは俺を勢いよく抱き寄せてきた。そんなことをしている間に今日から五日間止まる予定の宿に到着した。


 俺達が扉を開けて宿の中に入ると、


「いらっしゃいませ!! お泊まりですか? それともお食事でしょうか?」


 受付に座っている女の子の元気な声が聞こえてきた。


「五日間止まりたいのだが大丈夫か?」


「大丈夫ですよ。食事は一日三回一階の食堂で行ってください。メニューはこちらで決まっている物をご用意いたします。お風呂は付いておりません。近くに銭湯がございますのでそちらをお使いください」


 父さんは受付で話を聞いた後五日間分のお金の小金貨二枚と銀貨五枚を払った。この世界のお金は、一番下が銅貨で日本円にすると十円と同じ価値がある。そこから十枚ごとに小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、白金貨と価値が上がっていく。今回の支払い分は日本円にすると二万五千円と同じくらいの金額である。


 その後、鍵を受け取り食堂で夕食を食べた後部屋へと向かった。


 部屋に荷物を下ろした俺達は、宿の受付で銭湯の場所を聞いた。


「銭湯の場所は、入り口を右に出てすぐの所にございます」


 受付で聞いた通りに向かった。銭湯は日本と同じで女湯と男湯に別れていた。母さんからは一緒に入りましょうと誘われたが、見た目は七歳でも中身は十八歳なのだからそれはまずいと思い、


「僕は、パパと入るよ。ママまた後でね」


 母さん誘いをお断りした。受付に小銀貨を四枚(日本円で四百円位)出して男湯に入っていった。中に人は殆どおらず貸し切り状態でかなりゆっくりとつかることが出来た。


 お風呂からでて宿に戻ると、母さんからの最後の勉強会が行われた。明日が入学試験当日なので、かなり難しい問題ばかり出された。俺はその問題になんとか答えて母さんからの合格を貰った。


 父さんからは、


「ケンイチお前は、俺に真剣勝負で勝つだけの実力がある。ママからの教えにもしっかりついてこれた。自分を信じて挑めば絶対に受かる」


 少し不安な気持ちもあったが、その言葉で全て吹き飛んで少し自信がついた。


 明日は、朝も早いので早めに寝ることにした。


 そして、入試試験当日を迎えるのだった。

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