第6話 父との対決 2
戦闘が開始されてから三十分ほどがすでに経っていた。その間父さんは全力での攻撃を続けていた。さすがにそれだけの時間ずっと全力を出していれば誰でも疲れてくる。俺はこのときを待ち反撃を開始した。
まず俺は、父さんの攻撃後にコンマ数秒の動きが止まることに気づきそこから攻めていった。父さんは、俺の攻撃をなんとか受けきり反撃を仕掛けてくる。だが、その攻撃を今度はかわすではなく受け流し、それと同時に父さんの後ろに回り込んだ。俺はそのまま父さんの背中に剣を振り下ろすが、ギリギリの所でかわされた。そこからは、形勢が完全に入れ替わっていた。
防戦一方になっていた父さんは、少しづつ剣を持つ手に力が入らなくなってきて俺の攻撃を受け止めるのも限界に来ていた。父さんは自分の限界が近いことに気づき、最後の力で俺に攻撃を仕掛けてきた。その攻撃を、右に数センチ動くことでかわし、父さんの脇腹に剣での攻撃を与えることで俺の勝ちとなり勝負は終わった。
父さんは、俺との勝負が終わった後少しの間気を失っていた。
勝負終了から一時間ほどで目を覚ました父さんは、左脇腹を押さえかなり痛そうにしていた。
「俺は負けたのか?」
父さんは、横にいた母さんに聞いた。
「そうよ。パパ負けちゃったのよ」
「そうか。ケンイチはたった二年で俺を超えてしまったのか。それは将来が楽しみだ」
父さんは、とてもうれしそうな顔で話していた。
俺は、父さんに声をかけようと部屋の近くまで来ていたが、話し声を聞き今日はやめておこうと思い部屋へと戻り休むことにした。
次の日の朝、俺は父さんと二人庭で話していた。
「ケンイチ、俺からの提案なんだけど、王都にある総合魔法学院に通ってみる気はないか?」
俺は、いきなりの父さんの提案に何も答えることが出来なかった。
「俺は、昨日お前に負けて、少し悔しくもあったが、それ以上に何処までお前が強くなるのかを見てみたくなったんだ」
もし俺が父さんと同じ立場だったら、こんな台詞はきっと言えなかっただろうと思った。
そんな父さんのことを俺はかなり尊敬している。
「でも何で俺を、その総合魔法学院に通わせようと思ったのですか?」
父さんよりも現状で強いのなら、学校なんかに通う必要がないのではと思った。それに、魔法学院と付く時点で魔法の勉強をする所というのは、容易に想像が付く、そんなところにろくに魔法を余り使えない俺が通って意味があるのだろうかと考えていた。
「理由はいろいろあるが、まずお前が七歳で世間のことや常識を殆ど知らないことが一番の理由だ」
確かにと思った。
「それにだ、総合魔法学院に行けば友達も出来るだろうし、魔法についての知識を得ることで、対抗策を見つけることが出来るだろう。今のお前では、魔法士相手にまともに戦うことが難しいだろうしな」
二つ目と三つ目の理由にも納得したと言うよりは、親として当たり前の意見ばかりであった。その後、総合魔法学院について詳しく聞いて見た。
父さん曰く、総合魔法学院は魔法だけでなく武器についても幅広く教えているらしく、貴族から平民まで数多くの生徒が所属している。授業では、一般教養から魔法や武器の実技授業などを行っている。卒業後は、Cランク冒険者の資格を貰うか、王城で魔法もしくは騎士見習いとして働く為の推薦状を貰うことが出来るらしい。
俺は、父さんの説明を聞き、通ってみるのもありだなと思った。
「だがこの話は、俺の独断では決めれない。家に戻って母さんと相談して決めないといけないのだがな。まあ、行くかどうか、今すぐに決めなくてもいいからよ。心の中にでも置いておいてくれ」
父さんは、それだけいって家へ戻っていった。俺は魔法学院に通えるのを少し楽しみになっていた。
その日の夕食のこと、父さんは母さんに昼間に俺に話した内容を同じように説明した。
「いいわね。ケンちゃんは、今でもすごく強いけど、これから先どれだけ強くなるかは母さんも楽しみだわ。だから、魔法学院にケンちゃんを通わすのは私も大賛成よ」
母さんは、二つ返事で了承してくれた。
「そうと決まれば、これから忙しくなるぞ」
父さんは、半年後に行われる、総合魔法学院の入試試験について話し始めた。
入試試験は、筆記と実技の二つの総合得点で合否が決まる。筆記は計算とこの国の歴史に魔法基礎で行われる。実技は、近接戦闘か魔法の二つに分けられており、受験者が好きな方を選ぶことが出来るそうだ。
俺は、入試までの半年間、母さんから筆記試験の勉強と、父さんから実技の指導を受けることになった。
そして半年の月日が流れた。
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