第3話 特訓 1
父さんからの稽古を受けたいと言うと、
「そうかそうか。じゃぁ特訓は、明日から行うから楽しみにしとけとよ」
父さんは、俺に伝えたいことだけ言い家へと戻っていった。その後俺は、素振り以外にも、家の周りを走ってみたりなどをして今の自分の現状把握に努めた。まだ五歳と言うこともあり、いろいろと鍛え甲斐がありそうだと思った。
自身の確認が終わった俺は、家へ帰り、夕食を食べた。母から外で何をしてたのと聞かれたので、走り回ったりして少し運動していたと答えた。
「ケンちゃんは元気ね。でも体を休めないと疲れを明日に残しちゃうわよ。明日はパパとの稽古があるのに疲れを残した状態だとまともに動けないわよ。だから早めに寝て疲れを残さないようにしないとね」
母さんは、父さんから特訓のことを聞いていたらしく俺の体を心配してくれている。俺は母さんに、出来るだけ子供らしく、
「はーい」
返事をして、部屋へと戻り寝ることにした。
次の日の朝、俺が目を覚ますと部屋の窓より朝日が差し込んできていた。朝日をまぶしく思いながら服を着替えて朝食を食べるために一階へと降りていった。
一階に降りると、母さんが朝食の準備をしていた。
「おはようママ」
「おはよう。ケンちゃん今日は早起きね。パパの特訓が楽しみだったのかしらね。ふふふ」
俺の挨拶に、母さんはすぐに反応して返してくれた。
母さんに挨拶した俺は、洗面所で顔を洗った後、食卓のいすに座り朝食が出来るのを待っていた。
朝食が出来上がると、母さんは食卓に料理を並べ始めた。俺は、手伝うよとだけ母さんに伝えて一緒に朝食を並べていく。すると、突然入り口の扉が勢いよく開いた。そこに立っていたのは父さんだった。俺は、普通に扉を開けて入ってくればいいのにと少し思っていた。
父さんは、入ってくるとまず洗面所に向い、汗を流してから、食卓の椅子に座り朝食を食べ始めた。朝食を食べていると父さんが、
「そうだケンイチ。今日の特訓だがな、まずは、俺の仕事を見学してもらおうと思っているがどうだ?」
「うん。分かったよ」
俺は、それだけを父さんに伝えて、すぐに朝食を食べ終えた。父さんも俺と同じタイミング食べ終えると、俺の方を一度確認し、
「じゃぁ、行こうか」
父さんのその言葉を聞いた俺は、すぐに椅子から降りて父さんの後ろについていった。
最初に父さんが向かったのは、この村にある冒険者ギルドであった。中に入ると、依頼を張り出す掲示板や、食事をするテーブル、それに受付があった。父さんはまっすぐに掲示板に向かうと、そこに張り出されている依頼の一つを迷うことなく取り、受付へ持っていった。その依頼は、簡単に受理されたらしくすぐに俺の所に戻ってきた。
「よし、行くか」
父さんはそれだけ言うと、ギルドを後にして目的地へ向かった。俺もすぐに父さんの後ろをついていった。
目的地に向かう途中父さんに、今回はどんな依頼を受けたのかと聞いて見たところ、
「今回の依頼は、Bランクの依頼のブラックボアの討伐だ。そんなに強くないモンスターだから安心して見ておけよ。それも特訓の一つだからな」
父さんは、俺に今回の依頼のランクと内容を教えてくれた。
それから、ブラックボアについても教えてくれた。ブラックボアはイノシシの三倍以上もある大きさで、前進真っ黒なモンスターらしい。その上、鋭く伸びた牙を持っていて、かなり凶暴な性格で、突進力が高いモンスターだそうだ。だが弱点も明確で、その突進をした後に隙が出来るらしくそこを狙えば倒すことも難しくないと、父さんが教えてくれた。
父さんと、今回のモンスターの話をしながら村の近くにある森へと入っていった。
中へ入ってから一時間位歩いた辺りで村を出てから使っていた特殊魔法の一つの気配察知に引っかかるモンスターがいることに気づいた。俺は、近くにモンスターがいることを父さんに伝えようとも考えたが、なんと説明したらいいか分からなかったため何も言わずに父について行った。
それから、さらに森の奥に入っていくと、木が立っていない少し開けた場所に出た。俺達のいる反対側を見てみるとそこにはさっき父さんが俺に説明してくれた特徴を持つモンスターがいた。
父さんもそれに気づき、俺に近くの木に隠れるようにと指示を出し、モンスターに近づいて行った。俺は、指示に従い近くにあった木の後ろに隠れて父さんとブラックボアの戦いを見ることにした。
まず最初に動きを見せたのはブラックボアの方だった。父さんが俺のいる場所から少し距離をとりながらブラックボアに近づいていた。特に大きな足音を立てることもなく近づいていたが、ブラックボアの半径百メートル位の所で気づかれた。
ブラックボアは、鋭く伸びた牙を前へ向けながら父さんに向かってかなりのスピードで突進してきた。普通の人間だったら避けることも出来ずにやられていたと思う。
だが父さんは、その突進をいとも簡単にかわすと、すぐさま片手に持っていた剣でブラックボアの右側後ろ足を切りつけた。攻撃を受けたブラックボアは、攻撃を受けたにもかかわらず何もなかったかのように、振り返りすぐさまもう一度父さんに向かって、突進していった。
「さすがにタフだな」
ゴルドはぼそっと呟いた。ブラックボアの最初の突進をかわし右足に一撃を入れて動きを鈍らす作戦だったが、さっきの攻撃が思ったよりも浅く入ってしまい大きなダメージを与えることが出来なかった。ブラックボアは、そのダメージを物ともしない勢いでもう一度突進してきた。それをもう一度かわしたゴルドは、さっきと同じ右後ろ足を攻撃した。
二度同じ所にダメージを受けたブラックボアは、そのダメージに耐えられずに地面に倒れた。すぐに立ち上がろうとはした物の後ろ足に力が入らずに、なかなか立ち上がれずにいた。ゴルドは立てずにいるブラックボアの後ろ足を両方とも切り裂き立てないようにした後にとどめを刺した。
「なんとかなったな。最初の攻撃が浅く入ったときは少しひやひやしたがな」
ゴルドは、そんなことを呟きながらケンイチが隠れていたところへ戻ってきた。
すごかった。ものすごい勢いで突進してくるブラックボアの攻撃をいとも簡単にかわすとすぐさまに、後ろ右足に攻撃を加えていた。多分父さんは、最初の突進の時に右足を使い勢いをつけるのを見逃さなかったんだと思う。その後、二度目の突進をブラックボアがしてきたときには驚きはしたものの、父さんは焦ることもなく、冷静にかわし攻撃を加えていた。俺は、いい物を今日は見れたと思った。
ブラックボアの一部を切り取ってからこっちに向かってくる父さんに
「お疲れ様パパ。すごかったね」
「ああ、ありがとな。ケンイチ俺の動きを見て何か参考になったか?」
俺は、父さんの質問になったよと答えた。その答えを聞いた父さんは、すごくうれしそうな顔で、俺の頭を撫でてくれた。
「よし。じゃぁ帰ろうか」
父さんはそれだけ言いい、村へ戻り始めた。俺もその後についていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます