信じ続けた反撃
リーシャが走り去った後、そこで始まった戦闘は酷く一方的なものだった。実力や魔力以前の問題としてそもそも一人で多方面からの攻撃に対応出来るはずがないのだ。
「小僧…………まさか本当にその程度なのか……?」
「何を言ってやがる………」
「本当にその程度の実力で俺達に挑んできたのか、と聞いている」
「ハッ、実力がなきゃ人助けをしちゃいけないって? 笑わせんなクソエルフ共」
「俺は『戦士』だ、さっきあの場で逃げてたらそれを名乗れねぇ…………だから俺はここにいるんだよ…………」
「………………どうやらただの馬鹿だったようだな………それとも切り札があるのかと勘繰って慎重になっていた俺達がバカだったか…………」
カイに起死回生の手はないと見るや、これ迄の魔法を遥かに凌ぐ大きさの炎球が作り出された。カイはアレを防げる手を持ってはいない。そもそもあったとしても満身創痍の今では満足に扱うことも出来ないだろう。
炎球を作り出すエルフが一人、万が一がないように少し離れた位置で武器を構える四人のエルフ。どうやら最後の最後まで油断はしないらしい。
「それじゃあな、無謀の塊」
エルフが掲げていた手を振り下ろすのと呼応する様に炎球が動き始める。
カイと炎球の距離は容赦無く縮まる。その距離およそ二メートル、一メートル、五十センチ。
炎が彼を消し炭にするその直前、誰かが疾風の如く彼をかっさらった。
「なっ! 誰だ!?」
コンマ数秒でトドメをさせなかったエルフが驚愕の声をあげる。
「危なかったぁ…………、いやぁ炎球が当たる直前にチラリとお前のことを疑ったけどなんとかなって良かったわ…………」
死を回避したことに安堵の声を出すカイ、そんな彼に軽蔑の眼差しを向けながらリーシャは返事をした。
「ひっぱたくわよ、全く………『きっと私が間に合うからそれを信じて時間を稼ぐ』なんて無謀がすぎるわよ」
「大正解、今度はちゃんと理解してくれたな」
「私が間に合う保証なんてないのによくもそんなことを………」
「間に合わせてくれるって
はぁ………、と呆れた溜息を出しながら倒れたままのカイに手を差し出す。
「ほら、はやく立ちなさいよ」
「そうだな」
「「反撃の時間だ」………でしょ?」
「…………やっぱ被せてくるの腹立つわ」
感動の再会になりそうだったが、どうやらそんなことをしてる場合ではないようだ。
「なるほどな………貴様の切り札はこれか……、だが人間如きが一人増えた程度――――」
忌々しげに再び臨戦態勢に入ったエルフ達だったが、まだまだエルフの不幸は続く。
「二人だけじゃねぇぜ!」
冒険者の一人がそう言ったのと同時に次々と森から姿を現す冒険者達。
「カイとリーシャ含め計七人、いくらエルフと言えどどうにもならねぇだろ」
エルフ達にジリジリと近づきながらチェックメイトを宣言するハチマキの冒険者、追い詰められたエルフ達に残された手はなく、一方的な人間サイドの反撃が始まった。
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