憶測者から理解者へ

 理解出来なかった。


 何故彼が理解出来なかった。


 相手はエルフだ、普通に考えて一対一で敵う相手ではない。それが五人、例え二人の力を合わせてもようやく一矢報いる程度、子供達を救うには一歩足りない。

 確かに東側を捜索している冒険者も連れてくればあるいはチャンスがあるかもしれない。だがその間の時間稼ぎをした彼は満身創痍ではすまないだろう。何せエルフどもがやっていることは彼ら側の法でも裁かれるべきことなのだから。

 だから間に合わなければきっと彼は死ぬ。そんなこと彼自身も分かっているはずなのに、自らその道を選んだ。


 そんな折、ふと一つの理由が浮かんだ。それは自分の死を覚悟した時間稼ぎでも、彼自身に必殺の一手があるというわけでもなかった。

 他力本願、間に合わなければ犬死。だが、何故思いつかなかったのか、

 それが理解出来たのに応じるように駆ける速度が上がっていく。一縷の望みに懸けたその思いを叶える為に、私の全力で駆けて、彼の全力に賭けて。




 私達が『理解者』であるために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る