戦士の覚悟
適当な依頼を受けて二日、俺達は街に帰れずにいた。
「なぁ、俺達が受けた依頼って森の害獣駆除だよな」
「最初はね………」
そう、害獣駆除自体は半日とかからずに完了した。だが、街へ戻る途中で数人の冒険者が森にやってきた。何やら切羽詰まった様子だったので話を聞くと、
「子供が三人で森に行ったのはいいが、夕暮れ時になっても帰ってこない」
とのことだった。それを聞いて俺達も街へ帰る予定を中断して再び森へ入ったのだが………。
「まさかここまで見つからないとはな………」
豊かな森だったおかげで食料に困ることはなかったが、それよりも心配なのが子供達の安否である。
「それなりに大きな森とはいえここまで見つからないってのはどうなのかね。子供らしく隠れんぼでもしてんのか?」
捜索のために後からやってきたハチマキを巻いた冒険者がそんなことを呟く。
「取り敢えず今日は俺達は東側を重視して捜索をしてみる、カイとリーシャは西側を頼んだ」
「あいよ、そんじゃ次会う時は子供が見つかってることを祈るよ」
彼らから貰った手書きの地図を頼りに西へと歩く。名前を呼びながら探すが影はおろか声一つ返ってこない。
日が暮れ始め、子供達の生死を諦めかけたとき、唐突にリーシャが耳を澄ませた。
「ねぇ………なんか子供の声が、叫び声が聞こえない………?」
「叫び声………? そんなの聞こえない…………」
俺がそう言い終わるよりも早く、リーシャは疾風のように駆けた。
戸惑い半分で走り出した俺は数十メートル進んだ辺りで急制動を促された。促されたというか強制されたに近かったが。
「何だ!? いるのか、ここに子供が」
「静かに………ほら、あそこ…………」
指差すそこは森のギャップとなりそれなりに開けた場所となっていた。
木の影から指差す方向をそっと覗くとそこには恐らく探していた子供達とそれを囲む五人の人がいた。
「…………ありゃエルフか? なんでそんなやつらがこんな所に………」
「………ちょっと待って……、ここからでも聞き取れるかも…………」
そう言うとリーシャは小さな声で呪文を呟いた。すると杖の先からこれまた小さな音が流れ始めた。
『ふぅ………狩りを始めて一週間、ようやく獲物を手に入れられた。獣狩りのハズがこんなボーナスが入るとはな』
『あぁ、しかも大量にだ、こんだけいりゃあしばらく金には困らねぇだろ』
『さっさと帰ってこいつらを売りさばこうぜ』
もう充分だと判断したのかリーシャは杖から流れる音をスっと消した。
「…………どうやら保護したわけじゃなさそうだな……、にしてもエルフの誘拐かよ、ろくな目に合わされなさそうだな………」
「もちろんあなたのことだから」
「「助ける」に決まってるだろーが」
相変わらず理解されきった俺の考えにため息をつく。
「…………で、どのタイミングで行くの? 私はいつでもいいわよ」
「それじゃあ」
「あいつらが完全に向こうを向いたら――」
「お前は東へ行って救援を頼む―――」
珍しく考えを理解出来なかったらしく全く別の意見が飛び出た。
「えっ? なんで…………?」
「お前、そりゃあっちはただでさえ人数有利なのに相手はエルフだぞ? 二人で飛び出して勝てるわけねぇだろうが」
「それだったら一緒に…………」
「それこそ駄目だろ、いつ逃げるかもわかんねぇってのに、俺があいつらを惹き付けるから時間を稼いでる間に呼んできてくれ」
「それじゃあカイは――――」
「俺が飛び出すのと同時に走れ、三、二、一、ほらっ今っ!」
それだけ言って俺は振り返らずに木陰から飛び出した。
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