始まりの街
朝起きたら何故かリーシャがすぐ隣で寝ていてガチの冒険者っぽい厳ついおじさんが微笑ましいものを見るような目でこちらを見てから近くの森に向かっていった。弁明しようにも袖を掴まれていて動くことも出来ない。こっちが恥ずかしい思いをしているのに肝心のリーシャはすーすーと寝息をたてながら夢を見ている、全くいいご身分ですこと………。
「…………まぁ、もうちょっとこのままでもいいか………」
誰かに聞かせるわけでもなく俺はぼそりと独り言を呟いた。
ちなみに街は来た道を十分ほど戻れば着く場所にあった。どうやら本当にすぐ横を通り過ぎていたらしい。なるほど確かに大きな街だ、さっきのおじさんも多分
「なんでこっちにいるの………?」
「それは俺のセリフだ、どんな寝方したら俺のところまで転がってこれるんだよ」
呆れ半分に質問を質問で返す、まぁ大方寒かったから無意識で温かいところに来たんだろう。
「ほら向こうに街が見えるぞ、支度を済ませてさっさと行こうぜ」
「はぁーい………」
若干の眠気が残っているようだが大丈夫だろうか…………。
リーシャの支度が済んだ後に俺達は街に入った。街の中は想像していた通りの賑やかさで見知らぬ顔の俺達のことを歓迎してくれた。親切な人に宿やギルドの場所を案内してもらったり、詐欺まがいの何かに引っかかりそうになったりしながら俺達は街のことを知った。
「それにしても本当に人が多いな……」
「ホントにね……そう言えばどれくらいこの街にいるつもりなの?」
「しばらく住んでみてそれで居心地が良かったら永住かな」
「ふぅん………それじゃ生活費とかはどうするの? この街を護るとか言ってるけど手続きとか時間かかるし何より『戦士』って安定した収入が得られないらしいけど?」
「そこら辺はほら………冒険者稼業と織り交ぜながらさ」
「ご両親の『冒険者』はあんなに嫌ってたのに?」
「なんて言うか……うちの両親は正規じゃないっていうか……こう…………しっかりと依頼を受けるタイプじゃないじゃんか」
「まぁ小さな村だったからいちいち紙に書くよりも直接本人達に言った方が早いものね」
村を出たのはつい昨日のことなのに俺はどこか懐かしさを感じていた。だが、そんなことを言ったら子供っぽいとからかわれるだろうからそれは心の奥に留めておくことにして話を逸らすために一つの提案をした。
「取り敢えずギルドに登録は済んだし早速依頼でも受けてみるか?」
すると彼女は少し考える素振りをしてから答えた。
「そうね、腕試しついでに何か受けましょうか、それはそうと故郷に懐かしさを感じるのは別にいいんじゃない?」
「ぐっ………バレてる………」
「ほら、行くなら早くしましょ? 昨日みたいに街の隣を通り過ぎたくないもの」
「流石にもう場所は覚えたから大丈夫だろ」
「あら? 自分が方向音痴であることを忘れたの?」
「……………ウィッス」
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