相変わらず
彼が手を振りながら家に戻っていく。深く深い紺色の髪と黒目な服装をしているせいで彼の姿はすぐに闇に消えてしまった。
今夜は冷えるがおかげで月が綺麗に見える。街に出たらこうして真っ暗なところで月を見ることは出来なくなるのかと思うと少し感慨深い気持ちになる。そう言えば彼に好意を抱くきっかけが出来た日もこんな夜だったか。
風邪をひいた祖母の為に薬草を採りに山に入ったのはいいが小さい頃の私は薬草採りに夢中で帰り道を忘れてしまっていた。その日は一応冬服を着ていたとは言え寒さが肌に滲みるような夜で、今日のような感想は一切感じられなかった。薬草が入ったカゴを抱きながら草むらの陰で泣いていた私を見つけてくれたのはカイだった。どんな道を通ったのか知らないが彼の服がところどころ
彼はもうこんなこと覚えていないかもしれないが、それ以来私は彼に釘付けになっていた。彼が戦士に憧れているように、私は彼に憧れを抱くようになった。それがいつしか好意に変わっていて今に至る。
さて、長い間思いに耽っているのもいいがここで風邪でも引いてしまったら目も当てられない。私だって出発を延期させるのは嫌だ。
そんなことを思いながら足早に家に戻る。あぁ、明日が楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます