相変わらず

 両親と話し合いをした日から一ヶ月と少し経った今日、ようやく街へ出発する準備が整った。ここまで時間がかかったのにはこの村の立地が関係している。何しろこの村は山の麓にあって直近の街までが酷く遠いのだ。おかげで必要な物を集めるのに手間取ってしまった。しかし準備が済んだ今、最早俺を縛り付けるものは何もない。


「リーシャに明日にでも出発することを伝えよう………かな?」


 そう思い彼女の家に向かおうと足を向けた俺の目の前に既にいた。普通にホラーである。


「こんばんはカイ、丁度私も準備が整ったことを伝えに行こうとしてたんだ」


「………もし俺が違うことを考えていたら勘違いした恥ずかしい奴になるぞ」


 負け惜しみ、とでも言うべきか。少し舞い上がっていたことの照れ隠しの意味も兼ねて少しからかってみる。


「そんなことは万に一つも有り得ないかなぁ、今までだってこれからだってそんなことないわ」


 相変わらず考えていることが読めない奴だ。

 このまま話を続けても平行線を辿るだけの気がするので要件を伝えることにする。


「とにかく明日の朝に村を出るからな、前日にこんなことを言うのは遅い気がするけど体調は崩すなよ、出発を延期にしたくないからな」


「うん、それじゃおやすみー」


 手短に手だけ振って自分の家に足を向ける。もしかしたらしばらく今の家に帰れないかもしれないということにちょっとした虚しさを覚えながら俺は家に帰った。

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