理解者
アイスティー
理解者
理解者
「ふっふーん! どう? やっぱり私はカイのことを完全に理解しているでしょ?」
さっきまで僕ことカイは両親とこれからのことについてを話していた。
僕の両親は二人とも『冒険者』と呼ばれる職業に就いている。ただ冒険とは名前だけで実際には狩人などと同じようなことしかしない。というか殆ど違いはない。違いといえば狩人よりも雑用が多いことくらいだろう。遠くに住んでいる息子が心配だから様子を見てきてくれ、子供たちに狼がいかに恐ろしいかを教えてあげてくれ。大体そんなものばかりだ。だから僕は『戦士』になりたかった。自分よりも強い相手と戦い村を、街を、そして国を護る。そんな憧れの存在になりたいという旨の話をした。もちろん最初は否定された。だが、ここまでは想定通りだ、どうして戦士に憧れたか、どうやってなるつもりか、なったあとはどうするつもりか。それを話して理解を得る作戦だったのだが、話始める前に彼女が来た。
「その話! 私が引き継ぎましょう!」
腰辺りまで伸ばした紺碧色の髪を振りまきながら扉を開けた彼女の名前はリーシャ。お隣の家の娘である。綺麗な碧眼で何処となくお嬢様感が漂うのだが、そんな見た目に反して我を突っ走るような性格をしているのだ。ともかくそんな彼女は両親の前に行儀良く座るとテンポ良く説明を始めた。「子供のときに見た戦士さんに憧れて――――、それでまず街に出て――――」と言った具合に説明を始めて何故か親の理解を得てしまった。しかも最後の最後で判断を渋る両親にダメ押しとばかりに
「大丈夫です! 私がついていますから!」
などと虚言をかましていた。性格に難がある彼女だがそれを除けば優秀そのものだからか、それなら安心とOKを出した親もどうかと思う。
そんなこんなで話についていけず気が付いたら今に至っていた。
「何がふっふーん、だよ。勝手に俺の夢を喋りやがって、しっかしお前には話していないのによく分かったな」
「そりゃそうでしょうよ、だって私はカイのことを理解しているからね」
「だとしてもそんなこと「頼んでねぇよ」」……ね?」
不貞腐れながら放った一言を真似される。手の上で転がされている感覚が悔しい。
「………まぁ、助かったよおかげで無事に夢に向かって行けそうだ。でも流石に私がついている、なんて嘘はすぐバレるだろーに」
感謝のついでにそんなことを言うとリーシャはキョトンとした顔でこちらを見た。
「え? 嘘じゃないけど?」
……………は?
「いやいやお前この前確か『街に出て魔法を使えるようになる、その後のことはその時考える』とか言ってたじゃねぇか」
「うん、だからあなたと一緒に街に出て魔法でサポート出来るようになって、その後のことは一緒に考える、って」
「言ってねぇよ、一言も言ってねぇよ」
「理解しているものだとばかり………」
「お前みたいに人の考えを理解するの普通は無理だから、一般的な男子には無理だから」
「………理解してるのはカイだけなんだけどな………」
こちらの耳を試すようにボソッと呟かれる、ギリギリ聞こえない程度の声で言うのはずるいと思う。それを隠そうと足掻いても無駄なことを知っているから適当に降参を認めつつその先を促す。
「小声で言われても分かんねぇって、てかマジでついてくるつもりなのかよ?」
「別に連れて行かなくてもいいけどそうしたら私はどこかで野垂れ死ぬつもりでいるから」
「………それ俺が拒否出来ないこと分かってて言ってるよな? くそっ、隙がないっつーのはこういうことなんだろうな、くっそ腹立つな」
「つまりついて行っても良いってことよね?」
「俺はお前ほど頭が良いわけじゃないし魔法が使える訳でもない、それでもいいってんなら」
「やったぁ! それじゃ今まで通りこれからもよろしくね!」
仕草がいちいち可愛いのも腹が立つ、全く……自由気ままにやっていくつもりだったのだが、一体どうなるのやら………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます