第8話「家苞(いえづと)」

 学校から帰った子供が見慣れぬ包みを提げている。唐草模様の小風呂敷。通学路に面した雑草だらけの売地の前に時折現れる風変わりな子がいて、先ほどニヤニヤ笑いながら「これ、あげる」と差し出したとか。

 ひとまず確認しなくてはと結び目をほどいたら、現れたのは蜘蛛の巣のような、はたまた、糸飴シュクレフィレに例えるべきか、白銀に煌めくフワフワ、モクモク、キシキシした未知の物体。それがひとしきり泡立つように広がったかと見るや、子供のクシャミで弾けて消えた。後に残った薄い煙は、粉っぽく甘ったるい匂いがした。

 唐草の風呂敷だけでも洗ってアイロンをかけて返してあげなくてはと思ったが、子供は「何となく、あの子にはもう会えない気がする」と言う。

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