第7話「井蛙(せいあ)」

 夜は蛙の大合唱。町内にも水田があり、そこが根城らしいのだが、収穫期に田から水が抜かれた後、彼らはどこへ行くのだろう……などと、家族で他愛ない話をしたら、変な夢を見た。


 カエルの体が縦横に伸び、膨らんで、子供の体格ほどになる。畦道にシャツやズボンや帽子や靴やランドセルやらが用意されていて、ヤツらはそうした一式を身に着け、人間に成り済ます。そして、適宜、分散して人の群れに紛れ込む。学校の先生は生徒の人数が増えているにもかかわらず、何となく異様な事実から目を逸らして黙認し、休み時間の教室では「ケロ」「ゲロロ」などという不穏な笑い声が、お喋りに混じる……。


 茶飲み話にかこつけて、子供に夢の内容を打ち明けた。馬鹿馬鹿しいと一笑に付されるかと思いきや、意外な真顔で、

「そうだよ。そんなことも今まで知らなかったの?」

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