第6話
「ちょっとお水飲まない?」
キスをやめて水を探す。何をしてくれているこの女は。おかげでキスするところを撮れなくなった。すぐに2人が寝室から出てくる足音が聞こえた。一層のこと、このまま外出してくれればいいのに。
しばらく外の状況を注視していると、
「いやぁん、やめて。エッチ!」
女が
するとすぐにメッセージが目の前に現れる。
[写真を確認しますか?]
[1番目の写真ファイル]
[2番目の写真ファイル]
二つのファイルが出てきた。2枚撮ったから当然だ。最初の写真を確認した。するとテーブルの上で赤裸々に体を重ねている二人の男女の写真が現れた。よく撮れている。そう満足しているとまた話し声が聞こえてきた。
「あのさぁ、お金もう少し貸してくれない?」
しばらくキスをしていたようだったが、お金を要求する声が鮮明に聞こえる。
「え? この前も貸してあげたのに。また?」
「あなた、お金たくさんあるくせに……。」
「一体何にそんなにお金が必要なの?旦那がお金稼いでこないの?」
「今、浮気がばれて別居しているの。慰謝料もとれないし、お金が必要なの……。」
「本当おまえって女は……とにかくこの前に貸したお金を返してくれるまでは……」
「ねーえ! 私がよくしてあげるから。一緒にシャワーでもする? 色々サービスするから先にシャワー室に入っていて。私、着替え持ってくるね。」
「ふーん、どんなサービスしてくれるのか期待しちゃおうかな。」
それを最後に話が聞こえなくなった。しかし、その会話の中で俺は虚無感を覚えた。すでに夫が
寝室に人が入ってくる音が聞こえた。服を取りにくるということはこのクローゼットを意味するようだった。その瞬間、緊張感のあまり唾をごくりと飲み込んでしまう。クローゼットが開いたらまた[ロード]しなければならない。予め指は [ロード]ウインドウに持って行ったら、桜井が寝室に入ってきてドアを閉める音が聞こえた。
ドアは
しかしクローゼットが開かれることはなかった。それよりも何かガサガサという音が聞こえた。ガサガサ。何か封筒のような物を破く音のようでもあるが、さほど大きく聞こえたわけではないため、何の音なのかの確信はなかった。
そして足音が聞こえると、クローゼットの前で止まる。ついに終わりかと思った。
しかし、その後、彼女はそのまま部屋のドアを開けて寝室から出て行った。
そして聞こえるのは水の音。
-シャァァアー
シャワーしながらそれをやると言っていたから、その時間のようだった。着替えは結局必要なかったのだろうか。とにかく、チャンスだ。逃げるチャンス。慎重にクローゼットのドアを開けてみる。
そして寝室から抜け出す。やはり誰もいなかった。リビングへ行ってみる。だが、誰もいない。声だけが聞こえてくる。神様がくれたチャンスだと思い、俺はその家から脱け出した。
それからは一旦帰宅した。ベッドに座る。カメラも結局失敗だった。脅しが通じない相手だ。俺は深呼吸を何度かした後、潜入によって分かった情報を整理した。
お金で駄目なら方法はなかった。いくら頭を
それから家に帰って再び玄関を観察し始めた。今頃、だいぶ不倫相手と激しい時間を送っているだろう。そしてお楽しみの時間が終わったら男を見送りに出てくるはずだ。その時が絶好のチャンスだと思った。
しかし、いくら瞳を凝らしても出てくる気配はない。
-くそっ
あの男、彼女の家で一晩過ごすつもりなのか。いくら夫と別居中だと言っても他の男を連れてきて部屋に泊めるなんて呆れて言葉も出ない。俺は退屈な時間と闘いながらも、どうにか攻略の糸口を見つけるために彼女に接近してやろうと、夜中まで外を眺めていた。だが、最後まで桜井は外に出てこなかった。そして相手の男も。
泊っていくに違いない。結局、朝までこの計画は保留しようと結論付けた。相手の男も仕事があるだろうから二日も一緒にはいないだろう。
それから俺もベッドに横になりなった。ずっと監視ばかりしていたからか目も痛く非常に疲れた。すぐに眠ってしまった。
ふと目が覚めた。起きたら夢だったという展開はやはりなかった。俺は背伸びしながらあくびをした。
ずいぶん眠ったな。時間があまりにも過ぎていたので、驚きながら窓の外を見た。すると桜井がゴミを出しに出ているところだった。彼女がゴミ出しをするのはいつも決まってこの時間だ。いつの間にか男は帰ったようだ。眠っているうちに機会を逃してしまうところだった。
ただちにお金を持ってマンションの下へと降りてきた。ちょうど桜井はゴミ出しを終えて自分のマンションへと戻ろうとしていた。俺は彼女のほうへ向って必死に走った。そしてわざと肩をぶつけ意図的にお金を落とした。これはお金を持ってどこか急いで走っていくふりをしてぶつかり、落としたお金を見せるお決まりの作戦。走りながら[セーブ]も完了した。準備万端だ。
「あっっ……」
「ああっ、すいません」
俺は彼女に謝りながら落としたお金を拾うと、桜井は予想通り目を光らせる。好奇心と強欲に満ちた目で俺のお金を拾い始めた。拾ったお金を俺に渡しながら色目を使う。
彼女の本性を知らなかったら惚れてしまうくらい
「大丈夫ですか?こんな大金を裸で持って、ひったくりにでも遭ったらどうするつもりですか。」
「遊び金を予めおろしておいたのがつい……とにかくありがとうございます。」
俺はそれとなく桜井が反応を示しそうな情報を吹き込んだ。すると彼女の目が輝き始めた。
「そんなところにお金を使わないで私と遊びませんか?ふふっ、私も結構いけてるけど、どう?」
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