第二五〇編 端役脇役の美学
この一連の恋愛劇が一つの物語だとするならば、主役はやはり
女の子にモテモテなイケメン野郎の
一方の俺は
少なくともあの日――バイト先に
そんな端役脇役の俺は、物語に大きく登場することは許されない。当然だ、
現に今日までの俺は主役の二人にだけは関知されぬよう、徹底的に行動を隠し通してきた。
クリスマスデートの時やバレンタインデー――厳密にはその翌日だが――、遊園地の観覧車など、俺が居合わせないところで
それでもそういう
だから――これが最初で最後の
「も……桃華……?」
――この最終局面に、
「……ごめんなさい。真太郎くん、
それが、現れた
「急に休んだりして迷惑かけて……本当にごめんなさい」
その声はところどころ
彼女がアルバイトを休んだのは単に真太郎と顔を合わせづらいからというより――勿論それもあるだろうが――、接客業にとって致命的な状態にある己を
「き、気にするなよ。今日もいつも通り暇だったし、店長も一人分人件費浮いて嬉しいだろうし……な、なあ、真太郎?」
「う、うん……」
「……ごめんね……」
「あ、謝るなってば。は、はは……」
「……」
「……」
「……」
三人分の沈黙が場に満ちる。俺が下手に茶化したようなことを言ったせいだろうか? ……それなら、どれだけ気が楽だったことか。
桃華がこのタイミングで現れたことが偶然であるはずもない。しかし俺には彼女の目的を読み取ることが出来なかった。
俺が真太郎を焚き付けたせいで、桃華は真太郎に
だが……だとしたら彼女の目的はなんだ? どうして今ここに――
「――私」
「!」
再び言葉を発した桃華に、真太郎と俺はびくついたように顔を上げる。
「――真太郎くんともう一度話をしたくて、ここに来たんだ」
それはまるで、自分自身に言い聞かせているかのような言葉だった。退路を断ち、背水の陣まで自分を追い込むためだろうか。
彼女の赤くなった瞳には覚悟の色が見える。それは
『だったら、あとは信じなさい』
『
「(……そうか、あの言葉の
俺は一度ぐっと拳を握り……そしてそれを
「……分かった。それじゃあ俺は先に帰らせて貰う」
「えっ……ゆ、悠真!?」
さっさと歩き出そうとする俺の肩を真太郎が掴もうとして、しかし俺はそれを振り返った視線だけで制する。
彼が俺を止めようとしたのは、既に俺の気持ちを知ってしまったからだったのだろう。……桃華のことを好きな俺が無理をして席を外そうといるのではないかと。
しかしその気遣いは見当外れだ、
「――最後まで、きっちり向き合ってやってくれよ」
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