第11話 何だか父が、すみません 1

「王宮の北棟は、ここに勤める者の居住区域です」


 未汝はりなに案内され、北棟6階の一室に案内された。そこが、今日から未汝の自室になるらしい。


 北棟というのは、王宮に住む人々の自室のある棟なのだそうだ。その6階というのは、主に王族や重臣の居住スペースで、現在はほぼ王族のみが使っているらしい。その為、セキュリティが厳重だ。


 ここに来る前、未汝の基礎データを入力する為に機械が並んだ部屋へと連れて行かれて、指紋や手指の静脈、目の光彩こうさい声紋せいもん、顔や身体の特徴などをスキャンし登録した。

 その登録なしにはこの階へは上がれず、エレベーターも止まらないとのことだ。


 階段で上がる方法もあるが、防弾ガラスの扉は、指の静脈と顔と目の光彩認証なくしては開かないらしく、エントランスを抜けた各部屋へと続く扉は、手の静脈と身体特徴をスキャンして開く仕組み、各部屋の扉は指紋認証と身体特徴をスキャンするシステムが搭載されているらしい。


 どれもこれもハイテクで、手指の静脈を読み込む以外は自動スキャンしてくれる。指紋認証については、ドアノブを触ると自動的にスキャンして認証されるらしい。


 ちなみに、手がふさがっている場合は声紋認証も可能なのだそうだ。


 部屋の一つ一つは、マンションとホテルを足して2で割ったような造りになっている。狭くて困るということはありえない広さがあった。


 部屋に入ってから数分後、扉をノックする音が聞こえた。


 「はい」とりなが返事をすると、ゆっくりと扉が開かれた。


 やってきたのは宮廷女官の仕事着を着ている、黒い髪を肩の辺りで切りそろえた、未汝と同い年くらいの女の子だ。


「あの、失礼します」


 少々戸惑っているように、部屋の中にいる2人に頭を下げた。引いてきた茶器の乗ったワゴンを部屋に入れる。


「早かったですね、美里みり?」


 りながそう声をかけると、美里と呼ばれた少女は顔を真っ赤にして首を横に振った。


「こちらが未汝姫です。ご挨拶を」


 うながされて、美里はワゴンから手を離し姿勢を正すと、きゅっとスカートを掴んだ。


「あの・・・・・私・・・・・私は・・・・・」


 緊張しているのか、そこから先が続かなかった。その様子を見て、りながどうしたものかという顔をする。


「美里、そこまで緊張しなくても・・・・・」


「は・・・・・はい!!?」


 緊張しすぎて、声が裏返ってしまう。


 あまり王宮から出ないせいか、人見知ひとみしりが酷い。


「美里、未沙姫と話をしている時と同じように話せばいいのですよ?何をそんなに緊張しているのです?」


「いえ、あの・・・・・・ごめんなさい」


「ほら、少し落ち着いて」


 先程まで自分が座っていたソファに腰かけさせると、美里の後ろにりなが立つ。


 数分後、少しだけ落ち着いた美里が小さな声で話し始めた。


「私は、西城美里さいじょうみりと申します。担当は王族付き女官です。普段は、姫様の身の回りのお世話をさせて頂いております」


 自己紹介が何とかできてホッとしたような顔をする美里に、未汝が「よろしくね」と笑う。


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