第10話 養父さんは心配なんだ人事の真相 1
その頃、南棟6階の王室に、りなの兄である架名が訪れていた。
文花に言われた通り未沙を自室のベッドに寝かせてから、状況を聞く為に来たのである。
この宮木兄弟は、両親を何者かに目の前で殺され、国王夫妻の戸籍外養子として育てられた。
引き取られたのは約10年前。架名が8歳、りなが5歳の時である。
その頃から宮廷の兵と同じような訓練を受けたり、文花に勉強を見てもらうなど、義務教育として学校に通う代わりにハードなスケジュールが組まれた。このスケジュールをこなすのは至難の業とも言えるであろうに、兄弟はそれを懸命にこなしていった。
養い親となった牧は、幼い子供にはキツすぎると言ったが、周囲の反対を押し切ってそれをこなそうとする兄弟を温かく見守り、自分の子供同然に扱ってきたのである。無理をし過ぎる時には本人の意思を無視してでも休ませるようにするなど、常に兄弟の様子を見守るようにしていた。
兄弟は何事にも努力を惜しまなかった。両親が亡くなったことを自らで受け止め、その悲しみに暮れることなく互いを助け合っていた。
その甲斐あってか、訓練でも上位につき、勉学でも優秀な結果を出すようになり、普通の人が10年以上かけて学ぶものを、たったの5~6年で大学卒業程度の学力を身につけてしまった。
王閣は万年人手不足だ。どうせならと大学院卒業資格を得る為の勉強もしながら、兄の架名を未沙のボディガードとし、弟のりなは牧の政務の手助けをするように、それぞれ職に就けたのである。
「・・・・・・そのまま自室へお連れし、今はお休みになられています」
「そうか。ご苦労様、架名」
未汝の父でありこの竜華燕国の国王、鈴香牧の言葉に、架名はホッとした。苦手な報告という仕事を無事に終え、本題である状況説明を待つ。
「それで、まぁ聞いたとは思うが・・・・・・」
架名は本題であるその内容を聞き逃すことがないように、再び意識を集中させた。
「未汝のボディガードとしてりなを就けたのだが、そうすると政務の補助をしてくれる人がいない。そこで架名、りなの代わりにやってくれないか?もちろん、予算案等はりなにやらせるが」
何度も言うが、万年人手不足の王閣だ。りな一人が担っていた仕事量も半端ではない。そんなりなにボディガードの仕事をさせ、今まであまり政治には関与してこなかった架名を入閣させようという牧が何を考えているのか分からない。
「私はりなほど頭が良くはないので、同じようにこなすことができるかどうか・・・・・・」
「だが、俺よりは賢い。慣れればこなせるようになると思うが?」
架名はその言葉を聞いて、「足を引っ張るかもしれませんが?」とお伺いを立て、牧は笑いながら「別に構わない」と答えた。
「では、やってくれるな?架名?」
「はい」
架名の首肯に、牧は満足そうに微笑んだ。
「さて、じゃあ本題だ。架名、そこに座れ」
牧はそう言って、架名にソファーを示した。そして、「小雪」と傍で書類に目を通している女官を呼ぶ。
「はい?」
小雪は手元の書類から目を離し、牧へと目を向けた。
「今から少し休憩しても構わないか?しばらく、プライベートということになるが・・・・・」
「構いません。残りの政務を後できちんとやっていただければ」
仕事してくれれば構いませんよと言外に語る小雪に、牧が苦笑する。
「まぁそうだな、その書類を見るに今日中に片付けた方が良さそうだから、終わったら片付けよう」
「お願い致します。・・・・・退室した方がよろしいですか?」
「いや、いてくれて構わない」
小雪が軽く礼をして仕事を再開すると、牧は立ち上がって架名の向かいのソファーへ座る。
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