第4話 大きな扉

 地震が起きた時、未汝は階段を降りている最中さいちゅうだった。

 天井の照明がカタカタとれ出し、やがて体に感じる揺れを感じた。

 未汝は階段の手すりを落ちないようにぎゅっとにぎってささえにし、座り込む。


 結構大きな揺れだ。壁に掛けてある絵がガチャンと落ちる音がして、靴箱の上にある花瓶がガタガタと音を立てて倒れた。


 しばらく手すりにしがみ付いていると、揺れが止んだ。


 未汝は立ち上がって階段を降り、倒れた花瓶を直し、落ちた絵を元に戻そうとした。だが、倒れた花瓶を立てた時、今まで絵が掛かっていた場所に、見覚えのない鍵のついたネックレスが掛かっていることに気が付く。


「何?これ」


 未汝は手を伸ばし、それを手に取った。すると周りの景色がゆがみ、序々じょじょに辺りの色が薄くなってもやがかかっているかのように白くなっていく。


「何?ちょっと何なの!?お父さん!!お母さん!!」


 慌てて叫ぶが、その声は空虚くうきょな空間に響くだけで、誰の耳にも届かない。


 しばらくすると、見たこともない大きな扉が目の前に現れた。


「ここ・・・・・・どこ?」


 家にいたはずだ。自宅の玄関ドアはこんな大きな扉じゃない。信じられない光景を目の当たりにしながら状況を理解できず、未汝は手に取った鍵を握りしめてその場に立ち尽くした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る