第250話 セイレーンの集落に着いた

セイレーンのイリヤの後について、ドラゴンのドラムに乗ってセイレーンの集落へ向かった。


集落から数人が飛んで来た。


「何者だぁ!」


「私よ!イリヤよ!」


「おう!イリヤかい。後ろのドラゴンとモンスターはなんだ?」


「私をここまで護衛して同行してくれたの、集落に入れて」


「むむ、族長に聞いてくる。集落の外で待ってくれ」


「分かったわ。私も一緒に行くわ」


イリヤは此方を向いて集落の外で待つように告げると、集落に飛んでいった。


俺達はセイレーンの集落前に降りて、イリヤを待った。


魔神パズズのバズは風となり、鵺のライヤと空狐のクーコとドラゴンのドラムは、子犬サイズで待機している。


程無く、イリヤと集落のおさが俺達の前に現れた。


長は老齢の女性、所謂ババアだな。


なんて、不謹慎な事を考えていると、表情に出ていたのか、不機嫌な顔をした長が話し掛けて来た。


「なんだか無礼な事を考えているようだのぅ、妾がセイレーンの集落の長であるヨシノじゃ。一族のイリヤを護衛しここまで送って貰った事は礼を言うのじゃ」


俺はババアと思ってた事は惚けて、取り敢えず返答した。

「俺はショータです。いや、行き先の方角が同じだけだったので、礼には及びません」


目を細めて訝しげな表情で続けて話す。

「ふむ、先程一緒にいたモンスターは何処に行った?ドラゴンはそのちっこいのかえ?何の目的でここに来た」


「それを聞いて、どうするのですか?」


「主らはこの集落で一夜を過ごしたいのじゃろう、不審な者は集落に入れる訳にはいかんのじゃ」


「ふ~ん。なんだか上から目線だね」

しかも不審者って、そこまで言う?


「どうするのじゃ?話す気はあるのかえ」


これって、「泊めなくてもいいんだよ」って暗に言ってるんだよなぁ。


なんか、癪にさわるなぁ。

お願いして泊めて貰わなくてもいいかな。


俺は仲間達の顔を見回す。


エルフのエリとケット・シーのペロ、雪女のユキ、ヴァンパイアワイズマンのヨシゾーは頷き俺に任せるつもりらしい。


反対は大きく首を振るハーピーのハルカだけだ。


「ハルカ、御免よ」

って小声で言った後、長に振り向く。


「じゃあ、帰ります」

と言って振り返って集落から離れた。


みんな後ろからついて来るが、ハルカだけ躊躇した後、諦めて歩き出した。


「ちょ、ちょっと待ってください!長ぁ!酷いです。私がお世話になったのにお礼もせずに帰すなんてぇ!」

イリヤが大声で叫び、俺達の前に走って来た。


俺は立ち止まる。

「イリヤまたね」


そして、手を振ってイリヤの脇を通り過ぎる。


「長ぁあああああ!」

イリヤは長に怒鳴る。


長は、俺達の態度が予想外だったのか、一瞬唖然としていたが、イリヤの声を聞いて、俺達の前に慌てて飛んで来た。


「性急に事を急ぐな、誰も泊めないとは言ってなかろう」


「いや、言ってるのと同じでしょう」


「言ってないのじゃ!どうしても泊めて欲しいなら、そう言えば良いじゃろ。妾だって、一族の娘を助けて貰っているのじゃ。無下にする気はないぞよ。条件付きなら許可しても良いのじゃぞ」


「あ~、面倒臭い、別に泊めてくれなくて、結構です。こちらからお断りします。セイレーン族が恩知らずな事を理解しました」


条件付きってなにぃ?

俺は嫌味を言った後、長を押し退け跳躍すると、ドラムが馬サイズになって俺を乗せて飛翔した。その背にペロも飛び乗る。


ライヤとクーコとヨシゾーも飛び上がる。


ユキは冷気になって消えた。


ハルカは名残惜しそうに、後ろを見て、イリヤに手を振って飛び上がる。


イリヤが長の腕を掴んで怒鳴った。

「長ぁ!」


イリヤが俺達を追ってくる。

長は呆然と俺達を見上げていた。

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