第235話 ゾルゲ町の宿に行った

俺達は魔王国のゾルゲ町に着いた。


案内担当として同行し、御者をしているヴァンパイアワイズマンのヨシゾーが、宿に馬車を進めた。


宿は町の中心から少し外れにあったが、広い敷地で大きな建物だった。


「先ずは、宿を予約しましょう」


ヨシゾーとエルフのエリが、馬車を引いてたドラゴンのドラムを、馬車から外すとドラムはその姿を、大人の人間サイズに小さく変えた。


「ドラム、お疲れ様」


「うむ。それ程疲れてはないぞ」


パカン!!


ドラムの頭を弓で叩くエリ。


「ドラム、言葉遣いに気を付けるのじゃ!暫くぶりにショータ様と話したと思ったら、また始めの頃の無礼な口調に戻ったのぅ」


「うぬ、そ、そうか。ショータ様、失礼した」


「ん?別に口調はどうでも良いよ」


ドラムは「ほら見ろ!」って顔で自慢げにエリを見た。


その表情にイラッときたのか、エリは右手でドラムの頬を叩く。


すると、エリの右手は魔神パズズのバズの手に変わっていた。


ハーピーハルカが空かさずドラムの前に飛んで来て、結界の盾を構えた。


ズズズシイイイイイン!!!


揺れる地面と建物。


バズの強力な一撃を、ハルカは結界の盾で展開した結界で受け止めて一言。


「エリ、流石にそれは不味いってばー!ドラムの頭が消し飛んじゃうかもよー」


顔を青くして冷や汗を流し、うんうん頷くドラム。


「ドラム、謝っちゃいなー。お腹空いてるから、こんなところで時間を取られたく無いんだよねー」


とハルカもちょっとイラッとし始めて、風がハルカの周りで唸り始める。


ドラムはエリに頭を深く下げ、ペコペコ謝っていた。


それを苦笑いで見ている俺。

後ろには雪女のユキが付き添う。


「野蛮だにゃ。ショータが戸惑っているにゃ」


とケット・シーのペロも馬車から降りてきた。


足元には子猫サイズの鵺のライヤと、空狐のクーコがいる。


「魔王国ではこんな感じなんだね」

と俺はフォローにもなっていない事を言う。


「いやいや、ここまで暴力的ではないです」


と手と首を振って否定するヨシゾー。


一連の出来事を見ていた宿前にいたドアマンのサティロスは、唖然として固まり動けないでいた。


俺がドアマンを見ると慌てて前に出て来て、「馬車は裏手の厩舎で預かってますので・・・」と聞いてきた。


ドアマンの言葉の途中で、「大丈夫ですよ。しまいますね」と言って馬車をアイテムバッグに収納した。


目を丸くして驚くドアマン。


ポーターのリザードマンも宿から出て来て、「お荷物を運びましょうか?」と聞いてきた。


「いや、荷物も特に無いから大丈夫ですよ」と断ると皆で宿に入った。


「チェックインしてきますので、先に食事に行っていてください」


とヨシゾーが言うので、「おう、任せた」と言って周りを見渡すと、従業員のインキュバスが駆け寄って来た。


「レストランにご案内致します」


「ああ、お願いするよ」

インキュバスに案内されて、皆でレストランに向かった。

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