第217話 魔法使いナナミ2
部屋全体の炎が消えると、風壁に守られた俺達が無傷で現れる。
「な、何でよぉ!1万の兵士も魔物も焼き尽くす劫火なのよぉ!風の障壁如きで防げるはずはないのよぉ!!!」
「今度はこちらの番じゃな」
エルフのエリは風壁の中で弓を構えていた。
しかし矢を番えていない。
「クーコ!!」
「あいよ、ほないくでぇ」
空狐のクーコが炎の矢が生み出し、エリは炎の矢を放つ。
炎の矢は10本に分裂して、魔法使いナナミに四方八方から迫る。
「ふん、ファイアーアロー如きで私の結界は破れないわぁ!」
炎の矢は結界にぶつかる瞬間。
宙に止まった。
「え?・・・。なにこれぇ!」
「バズ!!」
「承知!」
エリは左手で持った弓を下げると、右手を振り上げ袈裟斬りの軌道で振り降ろす。
右手の指を曲げて、猛獣が爪を突き立てる様に・・・。
「おーっほっほっほ、何してるのか、・・・し、・・・らぁ?」
ガシッ!!
パリイイイイイイン!!!
魔神パズズであるバズの4本の爪が、ナナミの光の結界を突き破った。
「いぃやぁあああああああ!!!」
ブシュ!ズシャ!ガガッ!グシャッ!
ナナミの首、胸、下腹部、膝が袈裟斬りに斬り裂かれた。
ズシュ!ズシュ!ズシュ!ズシュ!ズシュ!ズシュ!ズシュ!ズシュ!ズシュ!ズシュ!
そして、宙に留まっていた10本の炎の矢が、四方八方からナナミの身体に突き刺さり燃え上がる。
ゴオオオオオオオ!!!
「ああああぁ!」
「ナナミ、お主こそ燃え上がるのじゃ。己の罪を悔いながら燃え尽きるが良い」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
対ドーセツ戦は始めからエリが一人でやる事にした。
ナナミ戦では心配で俺とハーピーのハルカが立ち会ったが、エリ一人で問題無い事が分かったしね。
そもそも、精霊使いのエリは魔神パズズのバズ、鵺のライヤ、空狐のクーコ、サラマンダーと4体の精霊と契約している。
精霊の力を借りる事が出来るし、召喚も出来る。
始めから5対1で戦う様な物だ。
そう考えれば、心配する必要は無いだろう。
全くエルフの精霊魔法って反則だと思うね。
魔法戦士ドーセツは目を閉じて立っていた。
自然に見えるその立ち姿。
肩幅に開いた足の位置。
しかし若干膝を曲げて、重心が爪先に寄って、いつも動ける体勢になっている事は、見た目には分からない様にしている。
右手で剣を持ち、左手に盾を持つが、ダランと下げて、身体全身の力を抜いて敵の出現を待っていた。
エリがドーセツの前にダンジョンの転移機能で出現し対峙した。
「来たか」
ドーセツは目を開けエリを見ると、ちょっとだけ驚きの表情を浮かべるが、直ぐに無表情に戻る。
「エリだったのか・・・」
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