第153話 勇者VS魔王軍

帝国軍と魔王軍が戦っているのを、山の上から望遠鏡で見ている俺達。


魔王軍はスケルトンの群れ、骸骨兵士だ。中には帝国の鎧を装備している者もいる。


帝国の兵士達は必死にスケルトン達と戦っている。


中にはスケルトンに斬られた者もいるが、後方よりヒーラーが回復魔法を飛ばし、兵士の盾を維持していた。


前衛兵士達後ろからは、後衛の弓隊から矢が雨の様に降り注ぐ。


しかしスケルトン達にはさほどダメージは無い。


弓隊が下がり、白いローブの一団が前に出た。


魔道士隊か?


魔道士隊は杖を天に掲げると、炎の玉がスケルトン達を焼き殺す。


しかし、スケルトンの群れは後から次々と現れる。


その時、帝国軍の後方から5人の人影が、飛翔して来た。


「勇者のパーティーが来たぜ」

モヤジーが望遠鏡を覗きながら、誰に言うでもなく声にする。


「あれが、勇者達かぁ?」

俺はその容姿をじっくり見る。


「先頭の小っこいのが勇者リクトだぜ」


リクトは中学生ぐらいの男の子。

複雑な模様の黄金の鎧に身を固め、赤いマントが風に靡く。


RPGの勇者そのままじゃん。


スケルトン達の上空で宙に浮かび、右手の剣を薙ぎ払う。


「聖剣だぜ」


聖剣から光が溢れ出し、遠くに居るスケルトン達まで、一気に薙ぎ払われた。


リクトは大笑いで左手でガッツポーズ。


「ひゃっはあああああ!」


ここまで声が聞こえるようだ。


しかしスケルトン達の後方から、黒い影が宙に浮かんだ。


「魔王軍四天王のエルダーリッチ、ザイガスです」

ヨシゾーが声を出す。


禍々しい闇がスケルトン達に降り注ぐ。


身体を上下に斬られて、崩れ落ちたスケルトン達が復活した。


糸で吊った人形が吊られた糸で上に引っ張られた様に、スケルトン達が不気味にスゥーと立ち上がる。


「ザイガスは死霊魔法の大家です」

とヨシゾー。


勇者の後ろに浮かんでいた魔法使いが、何やら詠唱し巨大な魔方陣がスケルトン達の上空に浮かぶ。


「勇者パーティーの魔法使いナナミだぜ。エリの仇の1人だぜ」

とモヤジー。


魔方陣から高熱の青白い炎の雨が降り注ぐ。


溶けていくスケルトン達。

ナナミを睨み付けるエリ。


ザイガスの周りの闇は、炎の魔法を弾いている様だ。


ザイガスは禍々しい闇で再度スケルトン達を復活させた。


今度は、ザイガスが杖を翳すと、帝国軍に天空より燃えた数百の隕石が落ちて来た。


勇者の後ろにいた白いローブの女性が杖を掲げる。


帝国軍全体を白く透明なバリアが包む。


「勇者パーティーの聖女ミクだぜ」


その顔を見て、俺は驚く。


忘れもしない、村で苛められていた俺を回復してくれた女の子だった。


ミクは俺を見た。

望遠鏡越しに目と目が合う。


「は?」


勇者リクトも此方を見た。


肉眼では、見えないはずの距離。


確かに此処に俺達がいる事に気付いている。


そしてザイガスも此方を見ている。


「ヤバイぜ。勇者もザイガスも此方に気付いたぜ」


ザイガスは左手を下に向けると、その先の地面から巨人が現れた。


「ヘカトンケイルです!」

震えるヨシゾーの声が聞こえる。


ヘカトンケイルは五十の頭、百の腕を持つ巨人。


勇者パーティーに襲いかかった。


勇者リクトは聖剣で迎撃する。

併せて勇者パーティーの剣士も両手持ちの大剣を振り回す。


「勇者パーティーの剣士カツエーだぜ!此奴もエリの仇だぜ」


そしてもう1人、燃える剣を振りかざす魔法戦士。


「同じく魔法戦士のドーセツだぜ」


カツエーとドーセツは凄まじい剣撃で、ヘカトンケイルを斬りつける。


斬り落とされるヘカトンケイルの腕。

しかし、ヘカトンケイルの腕は斬られたそばから、一瞬で生えてきた。


勇者とヘカトンケイルの戦いを見ていたいが、此方に気付いた勇者パーティーか魔王軍が向かって来る可能性がある。


「逃げるぞ!ドラム全員を乗せろ」


ドラゴンのドラムは10mぐらいの大きさになって首を下げる。


俺達はドラムの背に乗ると、ドラムが飛び立った。

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