第58話 スタンピードが発生した

森でダルと『気』の練習をしていると朝から王宮に魔族マロンの動向を探りに行ったペロから連絡があった。


水晶型通信の魔道具を持たせたが、突然声が聞こえてビックリ。


何か通信前に音が出るようにした方がいいな。


「王宮にマロンがいないにゃ。

魔力探知でも確認したので、間違いないにゃ。」


「いつから居ないんだ?」


「昨日から連絡が取れない様にゃ。」


「一旦戻っておいで。

商会で落ち合おう。」


「分かったにゃ。

あ!そう言えば王宮の様子がなんかおかしいにゃ。」


「ん?どんな風に?」


「慌ただしい感じにゃ。スタンピードが何とかって騒いでるにゃ。」


「スタンピードだって!

商会に影移動で早く戻って、シャルさんとエリに状況の確認を頼む。」


「分かったにゃ。」


「俺達も急いで戻る。」


水晶型通信の魔道具を切ると気を足に込める。


「ダル、気を足に込めて走るぞ。」


ダルもゆっくりだが足に気を込めた。


そして、走る。


ドラムがダルの上をチョロチョロ飛んでついてきた。


森を抜け都市の門が見えてきた。

門の中で争う音、罵声、悲鳴が聞こえてくる。


門の外には魔物はいない。

森から門まで魔物の姿はなかった。


どこから魔物が来たんだ?

都市の中に突然湧き出た様だ。


迷宮か?

あの石壁を越えたか。


門を抜けると、ゴブリンやコボルトと衛兵や冒険者達が戦っていた。


ざっと見て魔物はゴブリン、コボルト、スケルトン、ヘルハウンド、オーク達。


迷宮の低階層の魔物が殆どだ。


市民はここには見えない。


家の中に隠れてるのか、避難してるのか。


コボルトやゴブリン、スケルトンは衛兵達、冒険者達が優位に戦っているが、ヘルハウンドやオークに手こずっている。


ヘルハウンドにはそのスピードに翻弄されて、オークには力負けしている。


何とか連携して凌いでいた。


いつか迷宮の前で因縁をつけて来た狐目の男がオークと戦っているのが見えた。


「手伝おうか?」

と聞いてみる。


「はぁ?どけ!邪魔だ。魔抜けは足手纏いだ。何処かに消えてろ!」


「分かりました。」

良し、言質はとった。

絶対手伝わないぞ。


近くでゴブリンを倒して、息を切らしてる衛兵にちょっと確認。


「あの狐目の男は誰ですか?」


「衛兵隊のホクシン小隊長だ。」


ふむ。名前も覚えたぞ。

「有難う。」


さて、ニャルマル商会に向かおうか。


進行方向にいた魔物を指弾で一気に倒し、ニャルマル商会に向かって歩く。


勿体ないけど、急いでいるので死体はそのまま、魔石と素材は放置だな。


ペロもいないから、魔石を抜くだけで時間が掛かりそうだ。


俺が指弾で前にいたオークとヘルハウンドを一気に倒すと周りの衛兵や冒険者達はビックリした。


これで少しは衛兵と冒険者も優位に戦えるだろう。


先程、俺が話し掛けた男が駆け寄り。

「おい、お前強いじゃないか!

討伐を手伝ってくれよ。」

って言われたが。


「ホクシン小隊長に邪魔だと言われたから手伝わないよ。」

と言って断り、そのままニャルマル商会に向かう。


行く手をさえぎる魔物のみ瞬殺して、悠々と歩いてその場を去った。


衛兵達と冒険者達は魔物と戦いながら俺を見ていた。


これだけでもダルアのレベルが相当上がってるみたいだ。

スタンピードはレベ上げに良いね。


走ると一緒についてくるダルアが心配だから歩いて行こう。


後ろからダルがついてくる。

その上をドラムが飛んでいる。

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