第6話 魔石を売ってみようと思った

ゴヘーさんに言われた通り村長の家に向かって村の畑の中を歩いて行くと、建物が十数軒建っている場所があった。


この村のメインストリートかな?

食事出来る店があると良いな。


建物に近付くと、各ギルドの支部、宿屋、雑貨屋等があった。


目的は食事と町に行く道順を知りたいだけなので、村長の家に行かなくてもいいな。


魔石を売って食事をして、宿屋に泊まる事にしよう。

そう思って、雑貨屋に向かう。


魔石は冒険者ギルドに売るのが普通だが、俺は冒険者になる資格が無いので、ギルドには売れない。


雑貨屋に入る。

「いらっしゃいませ。」

雑貨屋の親父がカウンター越しに明るく声を出した後、こちらを見て胡散臭そうにジロジロ見ている。

「なんの用だ。」


「スライムとゴブリンの魔石はいくらで買えますか?」

先ず、売っている値段を聞いてみる。


魔石を売買するのは初めてなので相場が分からない。

それで売っている値段を聞いて、買い取りの値段の妥当性を判断する事にした。


「スライムは銀貨1枚、ゴブリンは銀貨1枚と銅貨2枚だな。」

雑貨屋の親父はジロッと見てぶっきらぼうに言った。


孤児院の服で崖から転げ落ちた時、あちこち擦り切れた服だからな。


貧乏人め、金は持ってるのか?あん!

って言う感じだろう。

それとも万引を警戒してるのか?


早めに服も買わないといけないな。

と思いながら、ポケットに入れていた魔石を半分程度出してカウンターに置く。

「じゃあ、これを売る場合は幾らで買い取って貰えますか?」


雑貨屋の親父は一瞬目を見開き驚いた後、少し考えてしかめっ面で答えた。

「スライムの魔石もゴブリンの魔石も一つにつき銅貨1枚だ。」


え!今度は俺が驚く。

売値の十分の一っていくら何でもボリ過ぎでしょう。

はぁ、安すぎるよ。

俺は溜息をついて、カウンターに置いた魔石をポケットにしまった。

「売るのを止めます。」


俺は振り返り店を出ようとする。

「ちょっと待て!」

雑貨屋の親父が俺を呼び止めた。


ん?値段交渉するのかな?

売値の半分以下では売らないぞ。

と思って振り向く。


「おい、それはどこから盗んだ。」

予想を反して斜め上の問い掛けだった。


泥棒扱いかよ。

「自分が倒して手に入れたんだが、どういう意味だ。」

ちょっとムッとして答える。


「銅貨1枚で引き取ってやるから置いていけ。俺が捌いてやる。」

雑貨屋の親父は更に失礼な事を言う。


はあ、頭にきたな、何で上から目線なんだ。この親父は。

「断る!」

俺は出口に向かって進む。


「お前、魔抜けだろう!魔物を倒せるはずが無い!銅貨2枚にしてやるから置いていけ!」

雑貨屋の親父は背中越しに叫ぶ。


俺はこれ以上会話すると殴ってしまいそうなので、無言で店を出た。


ここでも魔抜けと言われるのか。

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