抽出
深川夏眠
抽出
「花粉、埃、排気ガス。我々が否応なしに吸っては吐く、それらに異質なものが混ざっていたら……?」
てな話を部活の終わりに小熊くんと交わしながら家路に就いた。宇宙からの侵略者は仰々しい円盤で降下してくるより、微小な物質として訪れる方が現実味がある、というのが一致した意見だった。ジョン・ウィンダム「呪われた村」式、女性を妊娠させて新生児として世に出て行動を起こすパターン、ブラッドベリ「ぼくの地下室へおいで」式、キノコを人間が食べて肉体を乗っ取られるパターン——。
「他には?」
「初期形態はわかんないけど、地上に着いて出会った人に擬態する」
「本体はどうするよ。抹殺して入れ替わるってこと?」
などと語らっていると、
果たせるかな、
翌日、矢木くんは何食わぬ顔で登校したが、すぐにボロを出した。体育の前、更衣室で着替えられずにモジモジしている。細部データを抽出・インストールしそこなって、ボタンもファスナーもない制服に身を包んでしまったのだ。もっとも、レムの「ソラリス」は侵略SFではないけれども。
【了】
◆ 初出:パブー(2018年4月)退会済
*縦書き版は
Romancer『掌編 -Short Short Stories-』にて無料でお読みいただけます。
https://romancer.voyager.co.jp/?p=116877&post_type=rmcposts
抽出 深川夏眠 @fukagawanatsumi
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