第9話

続いて、彦星です。


「はじめまして。かぐやひめさま。私は。牛飼いをしています。」

彦星は、礼儀正しく答えます。


「はじめまして。彦星さまは、どうして私と、結婚したいと思われたたのですか?」

かぐやひめの問いに、彦星は答えました。


「実は、以前付き合っていた彼女と、疎遠になってしまい・・・」

「はい」

「もう、元には戻れないかなと・・・」

「どうして、言えるんですか?」


「元はと言えば、私の責任です」

「責任?」

「ええ。私は彼女を愛していましたが、それをいいことに仕事を怠けてしまいました」

「はい」

彦星は、続けます。


「そして、彼女の両親の怒りを買い、仲を引き裂かれてしまいました」

「よくありますね」

「ええ。でも私は改心し、以前のように、真面目に働きました」

「ご立派ですわ」

彦星は続けます。


「そして、年に1回だけ、会う事を許されていたのですが・・・」

「7月7日ですね」

「どうして、それを?」

「いえ、こっちのことです」

かぐやひめは、口が滑りました。


「ですが、ここ何年も、その日にすら彼女は来なくなったのです」

「そうなんですか・・・」

彦星は続けます。


「彼女はもう、他に新しい男が出来たのでしょう」

「どうして、わかるのですか?」

「いえ、男の勘です」

かぐやひめは、けげんそうな顔をします。


「なので、もう彼女の事は、忘れて・・・」


そこへ、大きな音が響きます。


「彦星さん、見損なわないで下さい」

「織姫さん?どうして・・・」

彦星は、驚いています。


「私は、あなた以外の男の人には、興味ありません」

「でも・・・」

織姫は彦星に、詰め寄ります。


「私があなたと、会わなかったのは、あなたのためなの?」

「俺の?」

「このお腹をみて」

織姫は、お腹をさすります。


「もしかして・・・」

「ええ、私とあなたの、赤ちゃんです」

「赤ちゃん?」


「私たちは、星。妊娠から出産まで、何年もかかります。なので、大事をとって・・・」

「そうなのか・・・」


「でも、ごめんなさい。知らせておけば・・・」

「いや、いいんだ・・・」


ふたりは、抱き合います。


織姫との愛を復活させた、彦星・・・

かぐやひめの元から、ふたりで去りました。


「かぐやちゃんも、がんばれ」

乙姫同様に、アイコンタクトをします。

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