14幕:人形使いは魔物退治をする2 上
【此奴は化物か!?しかしっ!!】(ホットル)
【己れ化物め!!だがっ1!】(コルドル)
二人はその姿に似合わない獲物を其々が構えながら目の前の得体の知れないモノに対峙した。
小さな二人には等身大の人のような姿をした何かはそれ以上のもの。
まさしく本物の化物だった。
放つ雰囲気は恐怖を伝染させ人を人形のような固形物へと陥としてしまう。
彼らの相棒の主人然り周囲に居合わせた町の人間然り、それは飛んでいる虫でさへ変わらなかった。
光を求め空を彷徨っていた虫はひっくり返り地に落ちている。
人間でさえそうなのだ。
虫でさえそうなのだ。
奴と対峙したものは絶望し下を向き、、、そのまま動かなくなる。
生きとし生けるものならば同じようなものだろう。
だが元が『ぬいぐるみ』であり、主人に命を吹き込まれた人形である二人には奴が放つ雰囲気に飲まれることはなかった。
そしてこの時、二人に生まれ出た感情は全く違う。
それはいくら剣でぶつ切りにしようとも魔術で木っ端微塵にしようとも数秒後には復活する奴への新たな畏怖と動けない主人への懸念である。
【ホットル時間を稼ぐのだ!!
【某は分析か!?承知!!】
数秒後には復活する得体の知れないモノを相手にホットルは何度も切りかかった。
角度を変え回数を変え力を込めたり込めなかったり手当たり次第に条件を変えながら瞬時に切り結ぶ。
どうやら物理的手段ではどうしようにもないらしい。
では魔力を込めるとどうなるだろうか。
剣に魔力を込め同じように検証する。
やはりどうやっても奴を滅することはできないようだ。
ならば属性付きならばどうだろうか。
ホットルは魔力の属性を変えながら絶えず復活する『化物』に剣を走らせた。
しかし火や風といった基本属性では埒があかないようだ。
ならば応用属性かもしくは複合属性。
もしくは、、、そう思いさらなる技を仕掛けようとした時だ。
【【!?】】
ホットルは切り刻む都度に何か違和感を感じた。
すでに10分以上相手をしているが何かがおかしい。
復活する時間は変わらない。
だが切り刻む回数が増えていた、、、つまり耐性が上がっているような気がした。
【コルドル!!此奴成長しておる!!】
【やはりか!!しかし今は時間が欲しい!!
【承知!!】
さらに数分が経過し、ついにホットルの限界が訪れようとしていた。
再生する度に繰り出す剣戟はすでに彼が放てるギリギリの手数なのだ。
このままでは『化物』を数分後には再度復活させてしまうのは間違いがなかった。
そうなれば全てが終わる。
しかし現実にそうはならなかった。
小さな影がホットルの前に躍り出たのだ。
【お前たち無事だったのか!?】(ホットル)
ホットルの剣戟の手数が限界に達した時、さらなる3匹の仲間が駆けつけたのだ。
熊のハニー、犬のボーン、猫のウィッシュ。
ホットル、コルドルと並ぶ古参の相棒たちである。
3匹は静かに頷きながら各々の鋭い一撃を繰り出しホットルの剣戟に上乗せしていく。
ハニーの剛腕は奴を殴り飛ばしボーンの牙とウィッシュの爪の一撃が乱舞した。
今ならば限界数を維持しなくとも仲間たちがいれば数分は猶予があるはず。
これであと少し時間が稼げる。
今ならばアレが使える。
そう確信するとホットルは『人形通信』で怒鳴り込んだ。
【クソニート!!双剣モード!!3秒遅れたら夜中に貴様の部屋の前でドア越しに黒板を引っかくぞ!!】
【ニートじゃねぇ!!自宅警備員舐めんなよ腐れ人形がぁ!!】
【無粋!!とくとせよっ!!】
見えない人形屋敷から射出されたのはホットル専用のオフェンスアーマー。
防炎防水対衝撃とあらゆるものから身を守る追加装甲、そして新たな腕が生えた身に纏う彼専用の鎧である。
飛び出すパーツを空中でドッキングしながらその勢いで4本の剣を振りかざし化物を切り刻んだ。
激しい光とともに中から飛び出したホットルはそのまま宙返りしながら名乗りを上げた。
【我こそはホットルMk-Ⅳ!!いざ参る!!】
強化されたホットルは仲間とともに強敵へと立ち向かうのだった。
今回は出番がないパト(・`ω・):ん。人形の癖に目立って生意気。
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