一通目 便箋一


君もそうでしたが最初からテンションそんなにあげられるとついていけない人もいるとわかって頂きたいです。



「君は不幸ながら、残念ながら、未練がたくさんあるかもしれないけど、死んでしましましたぁ!」


どこからか吹いてくる風によりたなびく白いドレスに眩しいほどのブロンドの髪、昔家族旅行で訪れた沖縄の海を思い出させるコバルトブルーの澄んだ瞳。白魚の様な肌、満面の笑みを浮かべつつ両手を広げ僕を歓迎している様に伺え、その人は完成された美を自らの身体で体現していた。あと胸も大きい。100人中99人神様だと人間の本能が伝えるだろう。残り一人は僕の親友だ。確実に何も思わない。鈍感であると同時に『美』とつく単語には残念な才能しか持ち合わせていない親友だ。ちなみに小学校は図工、中学からの美術に関しては今まで1以上を取ったことがないことを明言しておく。でももしかしたら胸に関しては拍手で迎えるかもしれない。男はみなおっぱい星人だ。


話が逸れた。


そう、僕は気がつくとこの空間にいた。上下左右360度ぐるりと見渡して白に囲まれたこの空間は扉も窓も空気孔すらない。それなのにどこからか風は吹いてくるし、子どものような声は聞こえるし、なんかいい匂いはするしで頭が混乱していたとき、この明らかに神様っぽい女の人が現れ、宣言したのだ。


残念ながら僕の生は終わってしまったらしい。


「うん、そう!ほんっとうに残念ではあるけど、君は自分のクラスの女の子のお胸を見ながら横断歩道を渡って偶然信号無視したトラックに轢かれてしまいました!」

「ダウト。絶対にダウト、認められない認めてたまるか」

「えーだって男の子はおっぱい星人なんでしょ」


この神様(仮)、ナチュラルに人の心を読んでやがる。やっぱり神様(本物)なのだろう。


「ええ、本物ですよ。と、まぁ冗談はさておいて、偶然信号を無視したトラックに轢かれてしまったのは本当。もっと言えば君がイヤホンさえ外しておけば助かる確率が…まぁちょっと上がる案件でした」


ちょっとか。世知辛い。

目の前の神様はにっこりと笑うとどこからともなく数枚のボードを取り出す。そこには【馬鹿でも分かる輪廻転成システムについて】と書かれてある。他にも【天国と地獄について〜ベートーベン風〜】、【某漫画で見る恐ろし…楽しい地獄】、【天使採用試験のハウツー】。なんだこれは。これじゃないあれじゃないと呟きつつボードを物色する神様。

いまいち緊張感に欠けるが、確かに僕は本当に死んでしまったらしい。認識した途端一気に冷や汗が溢れてくる。どうしてという感情とまだ死にたくないという感情が混ざり合い頭の中をぐじゃぐじゃにする。唯一良かったと思えることは死んだ時のことを思い出せないことだろうか。大なり小なりトラックに轢かれたのだ。絶対に痛かったに違いない。血という熱が大量に出て行くから体が冷えていくのだろうか。きっとこれが出血多量による死。覚えてなくて本当によかった。


「あ、あの」

「なんですか?言っておきますが生き返るとかはなしですよ。そこら辺ちゃんとしているんです。いくら私が君の世界の神様じゃないとしてもそこら辺はちゃんと平等にしてます」

「は、はい…ん?」


僕の世界の神様じゃ、ない?

じゃあ貴方は何処の神様?

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