雑記7:美人ってどう書く?
まぁ女性に限らず、「美人」に対する描写について、ある方のエッセイでちょっと気になる所がありまして…。
その方のエッセイは「美人」を「美人」という言葉を使って描写するのは好きじゃないって話をされてました。
まぁそれは色々な所で語られてる話ですし、話の内容そのものには私も共感しました。
で、その方が例文として美人の描写を書かれてたんですよ。
それを読んで思ったのです。
なんかその美女、なよなよしすぎじゃないか?
まぁエッセイの1ネタとして書かれてただけなので、そこら辺のリアリティとかは気にせず思い付いた事を書いただけなのかもしれないです。
でもその作者さんと似たような描写を実際の作品でもしている方って多い気がするなぁと思ったんです。
何と言いますか、多分「大和撫子」な感じの子がいいんだろうなってのは分かるんですが、表現の向く先が違うような気がしてならないのです。
"学園一の美人。"
上の字面から想像する人物像が、私のイメージと剥離している事が多いんですよね。
「おしとやか」で「控えめ」な女子が好きな方は多いのかもしれませんが、その子は学園一の美人にする必要があるのだろうか?
私のイメージでは、美男や美女って顔が良いってのもありますが、立ち振る舞いからどこかに「自信」が見えてないとなんか足りなくね?と思ってしまうんです。
だってその人の半生を想像したら自然とそうなりませんか?
きっと「周りからの承認欲」や「必要とされてる感」はフツメンやらよりも感じていると思うのです。若いなら特に。
美人である事をやっかまれて嫌な経験があるから大人しくなった、などの過去があったなら、もっと目立たないようにしようと必要以上に周りを気にしたり卑屈になって否定したり、みたいな性格になると思うんですよね。
「こんなに美人である事に本人が気付いてない」っていう状況に違和感を感じてしまうんです…。そういう状況って、多分女子からの受けが物凄く悪くなりそうな予感がします…。笑
そこを鈍感に過ごせる女子が果たしているのだろうか…。
また外見だけをあげつらった美人を書いて、周りがその人をちやほやしている描写を書くの、当の美女だけでなく周りの人間達の価値観も書く事になるからもうちょっと慎重に考えるべきだとも思うのです。
むっちゃ美人な子がいる!あの子は天使だ!マドンナだ!だけだと、人の上っ面しか見ない上っ面な人間達しかいないように見える…。
誰がそんな奴らと友達になりたいかって感じですよね。誰がそんな主人公に好感を持てるのかって感じですよね。
興味のとっかかりが「外見が優れていること」であってもいいけど、「興味を惹かれる」にはそれだけでは薄いと思うし、キャラクターの魅力もないです。
物腰柔らかいのにふとした時だけストイックな所が見えるとか、その綺麗な顔で○○が好きって…!とかそういう意外性が欲しいところ。
こんな美人でも、俺らと同様苦労してるところや庶民的な所があるんだなぁ…って共感できる所に興味って沸くものじゃないですか?
そもそも美人側は「自分の顔が好きなだけなのかどうか」、シビアに見てると思いますけどね。美人なりの苦労もきっとあったと思うので。
そうすると、この人は他の人と違う、と"尊敬"出来る部分が主人公側にもないと美人の興味は引けないと思うのです。
「美人」を「美人」と書くな、という論には賛成ですが、「美人」に説得力を持たせたり魅力的なキャラにするのは描写というよりも設定や作り込みの方がものを言うのではという気がします。
大多数の男が好きな女のタイプ(かは分かりませんが)=学園一の美人、という図式は私には成り立たないなぁ…。
皆さんの学校の美人ってそんな感じの人でした?
私のイメージに近い学園の美人像をカクヨムユーザーである坂水さんが書いて下さってました。
「あるはげた日に」って作品の中の宗谷さんが、結構すんなりと「これは美人だわ」って納得出来たキャラです。
学校って結構な閉鎖空間で、生徒同士の暗黙のルールみたいなものが渦巻いてますよね。女子にはそれぞれ所属するグループがあって、その外の人間と個人同士で会話する機会ってそれほどない。
にも関わらず、宗谷さんは自分が所属する「いけてるグループ」の外にいる主人公に気軽に声をかけてくる訳です。そこに主人公も最初驚いている。私と何の関わりもない、あの宗谷さんが…って感じで。
そこに彼女の「自信」を感じるんですよね。
自信って「かっこよさ」と「美しさ」と「色気」を感じる部分だと思っていて、自信がないキャラを私は美人だとイメージし辛いようです。
なので、引っ込み思案で大人しくて照れ照れもじもじしている子を「学園一の美人」と言われてしまうと違和感を感じてしまう…。
主人公にとってや読者にとって魅力的なヒロインを設定するのはいいのですが、そのキャラは「学園一の美人」にする必要はあるのだろうか?
いや分かるのだけどもね。
皆が素敵!って言っている人を自分の物にしたいという欲求、叶えられたら気持ちがいいものね。
でもそこを優先しすぎるとリアリティがどっかにすっ飛んでいくし、キャラ造形が一気に記号化されたものになってしまう気がするの。
キャラクターってお話の中で何よりも大切なものだと思っているので、作者は何よりそのキャラに付随してくるものは選別すべきだと思う訳ですよ。
「学園一の美人」というのは無敵の武器ではないです。
くっ付けるキャラによっては魅力も説得力も倍増するかもしれませんが、逆にそのキャラの評価を地の底まで落としうるものだとも思いました。
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