妄想
くるみ
妄想・由紀奈
姉はごちゃごちゃと説教を垂れていた
俺の頭のなかを風が吹き抜けるように姉の声が流れていった
姉が口を噤み声がしなくなると、言われたことはもう頭には何も残っていない
めんどくせー
意味ねー
どうでもよくね?
すでにオレの頭のなかは、由紀奈の妄想でいっぱいだった
冷静な自分が妄想を咎めたが、罪悪感より妄想の中にしたっていることへの心地よさが勝っていた
オレの存在は、完全に妄想に飲みこまれている
オレが無意識に息をするかのように
時間の経過とともに実現するのかもという不確実な自信が
日に日に増大していく
犯罪はこうして生まれていくのかもしれない
ぎりぎりのところでオレは妄想を抑えていた
止める者がいなければ、描いた妄想の過程をただ突き進むだけだった
オレの妄想、ありふれたくだらないかもしれないが、オレは由紀奈を抱いていた
一流ホテルではなく少し高級な海沿いの少女趣味のラブホテルのベッドの上で、
由紀奈と重なり合って揺れている
オレはそのとき、全ての感情を解放し、泣きたいくらい一生懸命由紀奈を抱いている
由紀奈はオレの腕の中で身を任せ揺れ、感情が高鳴り目じりには涙が流れている
なんて可愛い奴
こんな妄想で頭がいっぱいなのだ
刹那的でもかまわない、オレはだだ由紀奈と結ばれたいだけなのだ
動物のメスとオスが結ばれるように、由紀奈こそがオレの地上で巡り合えた唯一の女だと今は思えてならない
笑ってくれ、こんなオレの妄想。恥ずかしくて人には言えない
いい年をして少年のように気分が高揚しているんだ。由紀奈の声、由紀奈の瞳、由紀奈の仕草全てがたまらなく好きなんだ。だからやりたいだけなんだ
馬鹿だろ?オレ
相場は下落が始まり、もう大きなニュースが流れてこない限り
上昇へ転じることなく下降するだろう
このまま損切せずにいれば、負けが確定する
そして
相場は再び不確かな曲線を描き、上昇・下降を描き
終わりのないグラフを生み続ける
今、損切をして少額負けて、損失を少しに抑えるか
損切ラインまで我慢して万が一の上昇に賭けるか
選択、決定は自分の中にある
どちらがいいか絶対的な選択など存在しない
しかし、今すぐに決めなければいけない
未来を予測し動くだけ
オレの妄想も不確かな未来予想
仮に由紀奈とベッドで重なり合っていたとしても、その先はどうなるか誰にもわからない
相場はその時々の世界情勢を映し思いもしない動きを見せて、そのたびに多くの投資家が泣き、または笑う
こうしてずっと、相場のグラフは動き続ける
オレも死ぬまで妄想を止めない
その妄想は、女のことではないだろうが
妄想 くるみ @sarasura
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。妄想の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます