第4話魔女のメル2

プリンを食べて落ち着いたのか、メルは椅子に座り直すと、先程自分が何をしたのか話始めた。


「さっきは驚かせちゃったね、ごめん。キャプテンが言ったようにメルは魔女なんだ〜。

さっきの光は魔法で、プリンを出したのは、召喚魔法ってやつかな?

まあ、そんな感じ。驚いた?」


そう尋ねるメルに、少女は静かに頷く。

当たり前だ。魔女は童話の中の存在と少女は思っていた。

メルはどう見たって、自分と同い年ぐらいの女の子。

彼女が魔女だなんて、とても信じられない。


「やっぱりね〜。普通はそうだよね。魔女って見かけないもんね。でも、世の中には知らないだけで、不思議な事が沢山有るんだよ。まあ、驚かせない為にも、普段は隠してるんだけど。」


「それに、メル自身知らない事も有るしね〜。迂闊に魔女ですって言えないかな〜。」


そう言って、少し寂しそうな顔をする。どこか儚げで、先程元気に喧嘩していた顔とはまた違う、憂いを帯びた目だ。


「それってどう言う事?」


少女は尋ねる。

その問いにメルは答えず、代わりにキャプテンが答える。


「メルには記憶が無いんだ。だから、自分が何者か分からない。わかるのは名前と少しの魔法の知識ぐらいだ。」


「えっ、、、」


思わず言葉に詰まる少女。

予想していなかった回答だった。

メルも魔女である以前に、1人の女の子なのだ。

記憶が無く、自分が何なのか分からない事は、どれほど不安な事か。少女には想像もつかない。


「だから、記憶を探して旅をしている。メルを知っている人か、或いは過去に行った事がある場所へ行く事で、何か思い出せるかもしれない。そうすれば、メルが何者なのか、分かる筈だ。」


真剣な声でキャプテンは続けた。

何かまずい事を聞いた気がして、少女の顔が曇る。


「そうだったんだね。ごめんなさい。変な事聞いちゃって。」


そう言って俯く少女だったが、パンっと手を叩く音で、顔を上げる。

見ると、先程までとは違い明るい笑顔でメルが少女を見つめていた。


「まあ色々あるけど、旅をしている事で、君を助けられたし。オッケー!て事で!この話はおしまい!」


そう言って椅子から立ち上がる。もうその目に憂いなど無いように見えた。


「今日はもう寝て、早く元気になってね。明日になったら、吹雪も止んでるだろうし、麓の町まで送るよ。メル達もそこへ行く予定だしね!それじゃ、良い夢を〜!」


そう言って手を振りながら、部屋を出ようとするメルだったが、少女が呼び止める。


「えっと、明日の事なんだけどね。私はまた、山の奥に行くから、一緒に下りれないの。」


「だから2人は先に行ってて。今日はありがとね。」


その言葉を聞き、メルは思わずキョトンとした。隣では、キャプテンが大きな欠伸をしている。


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