第3話魔女のメル1

メルと名乗る少女はベッドの横に椅子を持って来て、腰を掛けた。

少女も身体を起こし、彼女の方を向く。

メルは静かに、あの時何があったのか話始めた。

メルによると、自分達は旅人で、山の反対側から来たそうだ。

その途中、山頂を越えた辺りで吹雪に会い、避難場所を探していた。

そしたら、新しい誰かの足跡を見た。

それが気になり、足跡を辿って行くと少女が倒れていた。

まだ息があったので、取り敢えず近くの小屋に運んだと言う。

メルの話を聞き少女は礼を言う。


「ありがとうございました。メルさんは私の命の恩人ですね。本当に助かりました。」


そして深々と頭を下げてる。

少女の礼に、メルは照れ臭そうにしながらも、嬉しそうだ。


「メルさんじゃなくて、メルでいいよ。それで、どうしてあんな所に1人でいたの?」


「ちょっと探し物をしていて、諦めて山を下りようとしたけど、吹雪になってしまってそのまま、、、」


少女はそう言い俯いてしまう。雪山での出来事を思い出したのか、暗い顔になる。


「ああ!ごめん!嫌な事思い出させちゃったね!ええとほら、プリンでも食べて元気出して!」


慌てた様子のメルは、そう言って立ち上がると、スッと人差し指を立てる。


「プリンで機嫌を直すのはメルだけだろ。」


笑いを堪える様にキャプテンが言う。

しかしメルは、その言葉を無視すると、大きく息を吸い、そして歌い出す。透き通る声で楽しげな歌だった。

唖然として少女が見つめる中、メルは歌い続ける。

その歌に反応するように、メルの立てた人差し指に光の粒が集まって来る。

様々な色に輝く粒が指先に集まると、メルは小さく頷き、その指を虚空に振る。

何かを描いている様だった。


「〜♪♪!!!!」


最後に力を込めて歌い終わると、光が弾けた。

眩しさに少女は目を瞑る。


「はい、どーぞ!これで元気出して♪」


メルの声でゆっくりと少女は目を開ける。

目の前には、プリンの乗った皿が差し出されていた。

さっきまで、メルは何も持っていなかったはずだ。

見ると、もう片方の手にもプリンを持っている。


「ねえメル?一体どうやって?それにさっきの光は?」


混乱しながらプリンを受け取り、少女は尋ねる。一体メルは何をしたのか?と言うか、何者なのか?


メルは困った様子だったが、取り敢えずプリン食べようと、話をそらしてくる。


「メルは魔法使い、魔女だよ。」


その様子を見ていたキャプテンが答えた。

ちょっと待って!と言うメルの制止を聞かずにキャプテンが続ける。


「メルは訳ありでね。色々あって旅をしてるんだ。あんまり魔法を人に見せない様にって言ってるんだけどね〜」


首を振りながら、溜め息混じりに言う。

するとメルは、じーっと恨めしそうにキャプテンを睨む。


「ちょっとキャプテン!喋りすぎじゃない!」


「いや、魔法を見せた時点で、メルが普通じゃ無いのはバレるでしょ。」


「なら、キャプテンだって喋ったら、普通の虎じゃないってバレるじゃん!喋るの禁止!」


「それは今更だ」


メルとキャプテンの会話に取り残されていた少女だが、恐る恐る2人に言う


「え〜と、、、メル、キャプテン、取り敢えず一緒にプリン食べよ? 落ち着いてからお話ししましょう。ねっ?」

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