第103話 宮前生徒会長と真知子先生は親戚なんだと痛感しました

 北高祭前日。既に冷蔵庫は運び出されていた。本当にかついだのかなあ。その雄姿を見たかった。


 部室でライブをやるためのセッティングをした。座席数を20から30に増やして、先生の残りの私物はさらに厳重にカーテンで覆い、その周りを二段積みにした机で囲んだ。

 机の脚の隙間から見えるカーテンで覆われた物体…隠してる感じがして、かえって目立ってるんじゃないかなあ?


「安全点検を行います」


 生徒会の人たちが来た。生徒会長は教室を見渡し、副会長や書記さんに楽器や椅子の配置を確認するように指示を出した。プロデューサー香風このかとまどろみさん、亮とお嬢が対応した。


 あたしは会長対応だ。


 会長は二段積みの机とその奥にあるカーテンで覆われた物体をしばし眺めて溜息をついた。やっぱりどう見たって何かを隠してるのはバレるよね。


 会長は腕を組んで教室内を見渡しながらしばらく考えうなずくと、ついに口を開いた。


「机の二段積みは危険なので至急改善してください。人が近付けないようにするか、積み上げずに配置するか…そうですね、スペースの都合上、積み上げないと無理ですね。では机の周りをロッカーで囲んで人が近付けないようにしてください」


 からだから動かせるとは思う。だけど低いロッカーだから、机を隠すことは出来ない。


「考えている事はお見通しです。確かにそれでは人が近付けないようになるだけです。後で生徒会室に来てください。暗幕をお渡しします。ロッカーと机の間に暗幕を張れば大丈夫でしょう」

「え、でも会長、暗幕は事前申請していないと借りられないんじゃ…」

「安全のためです。生徒会長権限でお貸しします」


 会長、格好かっこいい。 


「それと、何かをたくらんでますね。私にはお見通しです。真知子先生は首根っこを掴んで人の動きを止めることが出来ますから、何かの時はあなた達を守ってくれるでしょう。ただ、昔は動きを止めた後5分間、その人の動きは止まったままでしたが、最近は掴んでる時しか止まりません。あなた達のくわだてをはばもうとする者が何人も来たら、1人の動きを止めることしか出来ないので、残りの人は引き続き阻もうとしてくることでしょう」


 5分?!生徒会長は何を言ってるの?


「5分も人の動きが止まったんですか?!」

「ウソです」


 生徒会長はスッとあたしの背後に立った。怖い。背後に居る気配が無い。そしてあたしの首根っこを掴んだ。まったく動けない。さすが先生と親戚だ。宮前一族の技なの?


「このように私も人の動きを止められます。さて、私は生徒会長としての職責をまっとうしなければなりません」


 首根っこを離され、動けるようになったあたしは振り向いた。生徒会長は悪戯いたずらっぽく笑っていた。


「その時は私に背後を取られないように気をつけて下さいね!」

「は、はい」

「ではあとで生徒会室に来てください。暗幕をお渡します。机とか他の何かが見えないようにしっかり隠してね」


 同好会の承認の時に、私は滅多に現れないと言っていた会長だけど、一度ひとたび現れると存在感が大き過ぎる。さすが先生の姪っ子だと痛感した。

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