第9話 同好会を作ろう その2

 次の日、微睡びすいは自己紹介での宣言通りQRコードを表示させたまま寝ていた。


 相変わらず寝てるな。この状態で周囲の音声が記憶されてるとか、やっぱり信じられない。

 亮は声をかけてみた。


「まどろみさん、おはよう」


 返事は無いし軽く寝息をたてている。と言うことは本当に寝ているのか?


「おーす、亮、おっはよ~っす」

「おう、岡本、おはよう」

「美少女まどろみさんは今日も寝てるのか~」

「メッセージは送ったのか?」

「送った、けど既読が付かないぜ」


 ここは友人として、ブロックされた事実を伝えるべきか?


「でもめげずにまた送るさ~」


 そう言って岡本は自分の席のほうへと向かった。まあいいか、今、美少女と言ったのが耳に入っていたら、ブロック解除してくれるかも知れない。頑張れ岡本。


 さっきからまどろみさんの席の前で茶髪ロングとカメラ女(と俺は勝手にあだ名を付けている)が同好会について話をしているんだが、この2人も同じくまどろみさんに誘われたんだろうな。茶髪ロングはピアノ、カメラ女はスマホカメラで活動したいようだ。


 さて俺は…どうするか。

 中学から引き続きでバスケをやれば、すぐにレギュラーを取れるだろう。だがいろんなことを経験しておきたいから、バスケと同じく好きだったアコギ(アコースティックギター)を本格的にやってみたいと思っている。


 軽音楽部が有れば部活でギターが出来ると思っていたのだが、この学校で楽器を扱う部活は吹奏楽部だけ。

 だから他の緩い(失礼)文化部に入ってアコギは独自にやるか、などと思っていたが、まどろみさんの作る同好会の活動内容にギターも加えてもらえば学校でも練習ができるから一石二鳥だ。

 ギターピアノスマホカメラ同好会か…そんなの承認されるのか?


「スマホの電源切って鞄の中にしまえー、音が鳴ったら没収なー、さっさと…」


 SHRの時間だ。担任が入ってきた。


「同好会の活動内容にギターも加えてくれ」


 まどろみさんの耳元で囁いておいた。こうしておくと後で話が早いだろう。


 亮はスマホの電源を切って鞄にいれた。視線を感じて横を見ると、スマホを鞄に入れている微睡びすいさんと目が合った。


「おはよう」

「お、おはよう」

「同好会の打ち合わせがしたい、放課後さっきの女子2人も呼んどいてくれ」

「おう、わかった、でもその時寝てたらどうするんだ?」

「いや、授業中しっかり寝とくから大丈夫だと思う。ギターとピアノとスマホカメラ、そして昼寝、活動内容を決めないとね」


 直接会話をしたのは初めてだ。寝てても話はしっかり聞こえていると言うだけあって、違和感なく会話が成立している。

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