第6話 微睡みこ × 日之池亮

 その日の夜、亮は自分の部屋でベッドに寝転び、他の学校へ行ったり、働き始めたりした同級生たちと一通りメッセージのやり取りをした。


 さあ、次は微睡さんにメッセージを送ってみるか。担任が入ってきた時と自己紹介の時だけ起きてたけど、あとはずっとウトウトしてたから話出来なかったしな。それにしてもあの自己紹介は面白かったよなあ。


「私と友達になりたい者はこのQRコードを読み取りなさい。と言いたいけど今はスマホを出せないからまた明日」


 東中から来た生徒はクスクス笑ってたけど、それ以外の生徒と担任は唖然としていたし。


〔こんばんは、QRコードを読み取った隣の席の日之池亮ですが 〕


 すぐに既読が付いた。今は起きているようだ。


まどろみ子

〔どっちの隣?右?左?〕


〔右側だよ〕


まどろみ子

〔バスケをやめると言ってたヤツだな、こんばんは、まどろみ子だ〕


 寝たふりだったのか?しっかり会話を聞かれていたようだ。


〔なんだ、寝てると思ったが聞いてたのか〕


まどろみ子

〔そんなこと寝ててもわかるよ〕

〔私は寝てても周囲の声や音が耳から入ってきて、それが記憶されるんだ〕


〔なにそれ?よくわからんが、それが睡眠学習ってやつ?〕


まどろみ子

〔正確には睡眠学習とは言わないと思う〕

〔説明が面倒くさいから、睡眠学習と言っているだけ〕


〔それって昼寝の時だけ?〕


まどろみ子

〔夜寝ているときも〕

〔夜は周りが静かだから何も記憶されないけれど、それでも脳の記憶の部分が活動しているから眠りが浅い。だからいつも眠いんだ〕


〔その睡眠学習のおかげで授業内容が記憶されて常に学年トップってわけか〕

〔この辺の公立中学はテストの順位はわからないと思うんだが、なんでトップって言えんの?〕


 前から疑問に思っていたので聞いてみた。


まどろみ子

〔そんなことは簡単にわかるよ〕

〔すべての科目で満点を取ればいい〕

〔そうすると私より上は居ないからトップだ〕


 なんと、全科目満点なのか?!


〔すげえな、特殊能力じゃん〕


まどろみ子

〔人を異能みたいに言うな〕

〔これでも苦労してるんだ、今だって寝落ち寸前なんだよ〕


〔悪い、いつも眠いのは大変だな〕


まどろみ子

〔うちの学校は、何か部活動をしないといけないが、バスケをやらずに部活はどうするんだ?〕


〔まだ決めてない〕


まどろみ子

〔そうか、同好会を作るつもりだから、気が向いたら入ってくれ〕


〔同好会?〕


まどろみ子

〔寝てても良いようなゆるい同好会を作らないと〕

〔私は普通の部活はやっていけないよ〕


〔ゆるい同好会か、考えとくよ〕


まどろみ子

〔岡本って知ってるか?〕


〔微睡さんの席の横で俺と部活の話をしてたヤツだよ〕


まどろみ子

〔そうか、私のことをヘンなヤツと言ってたヤツだな、こいつはブロックだ〕


 ブロックとはメッセージアプリの友達から抹消することである。

 可哀想な岡本、コクることなく振られたようだ。


まどろみ子

〔小清水泉って知ってるか?〕


〔それは知らない〕


まどろみ子

〔そうか、メッセージが来たから今からそっちの対応をするよ〕


〔了解〕


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る