第5話 ラブ・アンドときたらピースだよね

 ピース


 写真を撮りまくっている女子が、また友達と写真を撮っていたので、タイミングを合わせてピースしてみたら、その女子がこっちに向かって来ます。怖いです、毎回写り込むなと怒られるのかも知れません。


「ねえねえ、ラブ・アンド…」

「え?」

「ラブ・アンド…」

「ピ、ピース」


 その女子は笑いながら


「そう!わかってるね~、あたしは御前浜おまえはま美咲、あんたは?」

小清水こしみず泉です」

「小清水さんは、カメラを向けたら条件反射でピースする人かな?」


 御前浜さんは、ズケズケと言って来ます。前の学校には居ないタイプです。


「そういうわけでは無…」


 返事の途中なのに御前浜さんは私の横に並びスマホのインカメラを向けて


「はい、撮るよ~、ラブ・アンド…」

「ピ、ピース」

「うん、良いのが撮れた!さっき微睡まどろみさんのQRコード読み取ってたからメッセージアプリやってるよね?今撮った写真送るからID教えて」

「あ、はい」


 なんと、友達第3号ができました。私はスマホにQRコードを表示させ、まどろみ子さんについて聞いてみました。


「まどろみ子さんって、変わったお名前ですよね、苗字が窓で名前がロミ子なんでしょうか?」


 御前浜さんはQRコードを読み取りながら、


「ロミ子?あはは、何それ、あの子は微睡びすいさんだよ。微睡みこさん。よくウトウトしてるから微睡まどろみさん。あれ?微睡さんを知らないの?この辺の中学じゃ有名人だったのに。小清水さん、どこちゅう出身?」


 いきなりこの質問がきました。でも外部進学した理由を聞かれるのは覚悟はしています。


「女神山女学館です」

女学館じょがっこか~、お嬢様じゃん、小清水嬢だね、どうりでまどろみさんを知らないわけだ。あの子いつも寝てるけどいつも成績トップらしくてね、睡眠学習してるとか、実は夜に猛勉強してるから昼は寝てるんだとか、いろんな噂があるんだよ」

「いつもウトウトまどろみ子さんなんですね」


 外部進学の理由は聞かれませんでした。興味本位で聞かれるだろうと思っていた私が身構え過ぎだったのでしょうか。


 ポキポキ、通知音が鳴り御前浜さんから写真が送られてきました。


「あ、ありがとうございます。すごく嬉しいです」

「良い写真でしょ、出会った日のピース、ぜったい大事な1枚になるよ」


 本当に良い写真です。記念の1枚です。


 男子も居るし、知らない人だらけの学校で緊張感が凄かったんですが、御前浜さんのおかげで楽になりました。ちょっと圧が強いですが、良い人です。


女学館じょがっこから来たんだったら、ここに友達居ないでしょ。おーい、みやこ~」

「なになに~」


 さっき御前浜さんと写真を撮っていた女子がやってきました。


「こちら小清水嬢…小清水泉さん、女学館じょがっこ出身だって」

「そうなんだ、私は安井宮子、よろしくね~」

「よろしくお願いします」

「しゃべり方が丁寧だね~」

「お嬢だもんね、はい、並んで並んで、ラブ・アンド…」

「ピース!」


 今度は3人で撮りました。さっきの写真もそうですが、人物はフレームの端に寄って背景が広々と写っています。なるほど、さっきまで私が後ろでコッソリとピースをしていたのがはっきりと写っていたのでしょう。ああ恥ずかしい。

 宮子さんともID交換をして、友達第4号ができました。


「スマホの電源切って鞄の中にしまえー」

と、担任が入ってきました。

 御前浜さんはコッソリ先生の写真を撮っていました。本当に写真がお好きなようです。

 スマホの電源…微睡びすいさんは大丈夫でしょうか。あれ、いつの間にかスマホを直して眠そうに座っています。初めてお顔を見ましたがとても美人です。

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