第4話 東山大志

 北中きたちゅう出身の東山大志ひがしやまたいしは少し人見知りな性格だ。付き合いが悪いと言うわけでは無いが、自分から積極的に誰かに話し掛けるのではなく、話し掛けられるのを待つタイプ。


「お、大志、同じクラスだな、よろしくな~」

「うす」


 知らない人だらけの所に放り込まれたら、目が泳いで挙動不審になるし、ゼロから新しい人間関係の構築なんて怖い。

 でも幸いクラスの4分の1くらいが同じ北中出身だから助かった。中学からの友達をきっかけに新たな友達を作っていこう。

 何もしないよりは消極的でも動いたほうが良いとは思っている。


「ラブ・アンド…」

「ピース」


 さっきからピースをして写真を撮り無意識に指紋を写してしまっているあの女子といい、QRコードをさらして寝ている女子と言い、セキュリティ意識が低すぎだ。

 写真から指紋を読み取られたり、QRコードをネット上にばら撒かれて不特定のヤツに晒されたりしたら面倒なことになるのに。


 (私と友達になりたい者はこのQRコードを読み取りなさい 微睡)


 さっそく検索したところ、面白がった誰かがQRコードも写り込んでいる写真を載せていた。

 こんなことするヤツがこのクラスに居るんだなぁ、気をつけないと。

 と、思いつつもその写真からコードを読み取れるかを試したら、しっかりと友達追加された。


新着 まどろみ子


 東中の微睡さんか、噂通りよく寝る人なんだな。

 大志はメッセージを送った。


大志

〔QRコードが○イッターに載せられてるから、さっさと更新して別のコードに切り替えて今のコードを無効化したほうが良い〕


 対面では人見知りだが、ネットを駆使すると積極的なのである。

 そう、彼が積極的になるのはスマホでのゲームや各種SNS。特にSNSでは多くの情報を発信し、フォロワーも多い。身近に起きていることもすぐに○イッターなどを検索して情報を集める。


 寝てるから既読付かないな…早く気付けよ。


「スマホの電源切って鞄の中にしまえー、音が鳴ったら没収なー、さっさと座れー、ゲーム中のヤツは1分待ってやるから終了処理をしろー」


 おっと、ゲームが途中だった。急いで終了させないと。この担任、1分待ってくれるのか。ゲームに理解が有りそうだ。



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